女難って言葉に憧れたこともあったわけですよ、若い頃のぼかぁ。
そもそも女難どころか女の子の影すらないわけでして、「難でもなんでも、女の子にモテたいよう! モテる努力をしないでモテたいよう!」とグループ魂的なことを考えるのが男の子ってもんでしょう。

だがしかし、この『ねじまきカギュー 』<というマンガを読めば本当の意味の女難がなんなのかよーく分かると思います。そして「女難まじいらない」と青少年の心を正しい方向に向けてくれることでしょう。
ぶっちゃけて言えば、主人公のカモ先生という新米高校生教員以外、狂ったキャラしか出てきません。狂ったなんて甘いですかね、怪物的な女子しか出てきません。
いや、ちゃんと読み進むと、それぞれみんな超絶かわいいんですよ。かわいいんですが、ちょっと「それはないよ!」ってキャラぞろい。巨大な男ヤンキーにしか見えない女子高生とか、なにをどうやったらそうなるの?って女の子だらけです。
カモ先生は超女難体質。これだけ聞くとうらやましいんですが、その頭に「怪物的ヤバイ系女子」とつくと、全然うらやましくありません。
さらわれるわ、丑三つ時に告白されるわ、矢文を撃たれるわ。
うん、うらやましくない。
勘弁してください。


この超女難体質から守るためにやってきたのが、鉤生十兵衛、通称カギューちゃん。
カモ先生に近寄るあらゆる危険因子を排除していくんですが、この子の攻撃力がまた半端ではない!
一撃必沈を誇る彼女の必殺技は、螺旋巻発条拳(ねじまきぜんまいけん)。
弾性高く鍛えた体から放つ廻転の拳で、回転力は柔らかい肉体を持つ女にしか体得できない伝説の秘拳、だそうです。
よく分からないけれどもすごい説得力!

「ねじまきカギュー 」という作品には三本柱の魅力があります。
1・あらゆるものが狂っている。
マンガ表現だからできる「狂い」というのがあるんですが、出てくる人物みんな主人公以外どこか狂っているというのは強烈。舞台は普通の日本のはずなのに、全然別世界にいるかのようです。
まあ強いとか特殊能力があるとかはまだ理解できるんですが(漫画的に)、主に精神的に常識の通じない相手だらけなため、読んでいてフラフラします。
フラフラするんですが妙に心地いいのはカギューちゃんがそれを粉砕して、まさに宇宙の渦のような愛で包むため。

2・豪快すぎるアクション
カギューの必殺技は、体のしなやかさをいかして螺旋を起こす螺旋拳。これは攻撃してくる相手を弾き飛ばすのはもちろん、クッションがわりにしたりと万能。まさにぜんまい。

この螺旋が半端じゃない回転力を誇っており、マンガの紙面に映っているもの全て吹っ飛ばすかのように描かれているんですよ。余裕でコマに入りきらずはみ出してます。
豪快なんてものじゃない、天変地異レベル。理屈じゃないんだよ、かっこよさなんだよ。
あまりの螺旋力に、一撃放つと服がびりっびりに破けます。しかたないね! 弾性をつかっているからね!
 
3・純情乙女すぎるカギューちゃんの魅力
カギューちゃんがカモ先生を守るのは「カモ先生が大好きだから」という本当にシンプルで真正直な理由です。
実際、カギューちゃんは作中で、それこそ化物クラスの強い相手をもろともしないくらい強烈に強いキャラ。ところが彼女「恋敵を倒すため」には己の拳を使わないんですね。多分ライバルつぶしをはじめたら余裕でトップクラスなはず。しかしカモ先生を守るためには使うけど、こう言い切ります。
「恋に敵などいるのか? 己にとって恋は自分との戦い。もし先生を振り向かせることができなければ……それは己の愛が足りないからだ。
足りなければ……より強靭(つよ)く、より深遠(ふか)く、鍛錬するだけだ」

そう、守るために力を使うけど、戦うためには力を使いません。
かっこいいんですが、カギューちゃん本当に純真で、顔を真っ赤にして言います。「将来の夢は、カ……カモ先生のお嫁さんになること!!!」
カモ先生の幼なじみだったカギューなんですが、近くにいるだけで胸がときめいて赤面!
新しい制服を着てほめられたら、遠くまで飛び出して走って行って湯気が立つほど赤面!
「ラブコメ」を超越して「純情愛」。彼女が強いのも「カモ先生を好きだから」の一念だと思うともうたまらんですね!

非常にマンガチック、……どころかその枠をはみだしたような描写で描かれる狂った世界ではあるんですこのマンガ。
しかし一本筋通ったカギューちゃんの乙女っぷりが何もかもを飲み込んでいます。
螺旋の産む迫力あるバトルも、すべて彼女の愛ゆえに、というのがたまらんのだな。
最初は「カモ先生は私のものだ!」と嫉妬にかられる女性達(これがまた強いんだ)の戦いに巻き込まれていくのですが、カギューちゃんのまっすぐっぷりに惹かれてまともになっていく様も圧巻です。
少年マンガ的なダイナミックさとノリを保ちながら、掲載されているのはなんと「ヤングジャンプ」。
赤面とアクションで、大人の心も一撃必沈ですよ。
独自のセリフ回しとともに、ものすごいテンポよく読める作品。表紙からだけでは伝わらない「まさか」の純情っぷり、思う存分堪能してください。
(たまごまご)
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