今注目のアプリ、書籍をレビュー

リアル三国志の世界! 地図にない街、ワ州潜入ルポが凄い『独裁者の教養』

2011年11月15日 11時00分

ライター情報:小野憲史

『独裁者の教養』安田峰俊/講談社
世界の独裁者の生い立ちから、実在する独裁国家への潜入、そして3.11後の日本まで。幅広い角度から「独裁」に迫る「独裁者の教養」

[拡大写真]

独裁者って何なんでしょうね。

人間の歴史は独裁者の歴史です。スターリン、ヒトラー、毛沢東......。特に20世紀は世界的独裁者のオンパレード。もっとも、彼らが前近代の独裁者と異なるのは、ちゃんとした教育を受けた、インテリだってこと。でも、どんな人生を歩み、思想や価値観をといった教養を積めば、独裁者になれるんでしょうね。

そんな、みんながあえて避けて通っていた難問に、直球勝負で挑んだのが、本書『独裁者の教養』(星海社新書)です。本書にはスターリン、ヒトラー、毛沢東、ポル・ポト、ニヤゾフ、リュー・クアンユー、フセイン、カダフィ、鮑有祥(バオ・ヨウシャン)という9人の独裁者の経歴と人となり、そして主要な政策が紹介されています。

あ、ニヤゾフ、リュー・クアンユーって知ってます? 前者は旧ソ連領だったトルクメニスタン共和国の終身大統領。2006年になくなるまで事実上16年間、同国の独裁者でした。リュー・クアンユーはシンガポール共和国建国の父で、首相を経て2011年5月まで顧問相として約40年間君臨。同国は観光地としても人気ですが、事実上の一党独裁国家で、「明るい北朝鮮」と言われることもあるんです。

ただ、それだけだと「お勉強チック」になっちゃうので、本書にはもう1つ、すごい爆弾が仕込まれていました。それが「地図にない街」ワ州への密入国ルポです。

ワ州は中国とミャンマーの狭間にあり、ミャンマー領なのに中国語が使われ、人民元が流通する「プチ中国」。いわゆる「黄金三角地帯」に位置し、かつては主要産業がアヘン製造でした。ここの総司令が鮑有祥。この街を筆者の安田峰俊さんが徒手空拳で乗り込み、庶民の暮らしをレポートしています。いや、これはすごい快挙ですよ。

安田さんは1982年生まれの29歳。大学院卒業後、一般企業に就職するも半年で退社。中国のネット掲示板をブログで翻訳しながら、その内容をまとめた処女作『中国の本音 中華ネット掲示板を読んでみた』(講談社)を上梓。ネットウォッチャーに飽き足らず、第2弾の本書では文献調査と体当たりルポを敢行と、その行動力はすさまじいものがあります。

著名独裁者の経歴パートの濃さもさることながら、やっぱり面白いのは密入国記。中でも現地の役人ルートで接触するも相手を怒らせてしまい、腹いせで入った売春宿でワ州出身の少女に遭遇、そのツテで密入国するくだりは神がかってます。この少女がまた、遊ぶ金欲しさに客をとり、ケータイでチャットし、著者をエア彼氏として家族に紹介するため実家に連れて行くという、その辺のコギャルって感じなんですよ。

関連写真

本書で紹介されている「ワ州」の中心都市パンサン。ミャンマー北部に位置する国境地帯...

衛星写真に切り替えると、そこにはなんと地方都市が! こうした地域は世界中にまだま...

ライター情報

小野憲史

ゲームジャーナリスト/フリーライター。「ゲーム批評」編集長を経て2000年よりフリーランスで活動中。業界レポート・インタビュー・コラム・レビューなどを発表。連載『小野憲史のゲーム時評』(まんたんウェブ)など。著書に『ゲームニクスとは何か』(構成協力)がある。2012年よりNPO法人国際ゲーム開発者協会日本理事長。
Twitter/@kono3478
Facebook/https://www.facebook.com/kenji.ono1

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ブログに投稿
  • mail

注目の商品

携帯電話でニュースをチェック!
携帯ポータルサイト「エキサイトモバイル」