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マリオのキノコはなぜ逃げるのか?

2012年2月27日 11時00分 ライター情報:米光一成

『インサート・コイン(ズ)』詠坂雄二/光文社
大森望の帯コメントは“人生(ライフ)を削ってPLAYしてきたすべての仲間たちへ。この本を読んで泣け。これが青春だ。”

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「スーパーマリオブラザーズ」のパワーアップアイテムのキノコは、なぜ逃げるのか? ファイヤーフラワーは動かないのに。

詠坂雄二『インサートコイン(ズ)』は、ゲームデザインの謎をめぐる小説。ゲーム誌のライター柵馬朋康が主人公の5篇で構成される連作短編集である。
ミステリ的には「日常の謎」「日常ミステリ」と呼ばれるジャンルに分類されるだろう。

スーパーマリオブラザーズ発売二十周年で「逃げるキノコは実在した!」という記事の取材に出かけた主人公は、鎌を持った男とすれ違う。その後に、岩場で
“赤黒いものがぶちまけられていた。
大型の動物が解体し持ち運ばれ、掃除が忘れられたとでもいうかのように。”
目撃してしまう。
ところが翌日、同じ場所には、痕跡がない? なぜ?
というのが、最初の「穴へはキノコをおいかけて」における謎だ。
その謎を聞いた流川映(るかわあきら)先輩が、ゲームデザインのしくみを解き明かすのと平行して、謎を解明する。

扱われる「ゲームデザインの謎」を紹介しよう。
「穴へはキノコをおいかけて」
マリオはジャンプする時になぜ片手をあげるのか?
「残響ばよえ~ん」
ぷよぷよのカラフルな色の秘密は?
「俺より強いヤツ」
格ゲーのストーリーは、なぜ大概ひどいのか?
「インサート・コイン(ズ)」
シューティングゲームは没落したのか?
「そしてまわりこまれなかった」
ドラクエIIIで最大の伏線が何かわかるか?

5篇すべてが「日常の謎」と「ゲームデザインの謎」が絡まり合い、先輩ライターの背中を追う主人公の成長の物語へと結びつく。

実は、帯のコメントをたのまれて、『インサートコイン(ズ)』を読んだのだけど、まあ、こんな設定の小説が出たら、そうじゃなくったって読まざるをえないだろう。
なにしろ、ぼくは、ゲームデザイナーで(「ぷよぷよ」の企画監督です)、ライターの仕事もやっている(今、書いてる!)のだから、ぴったりの読者だ。というか、もっとも厳しい目で読んでしまう読者なのではないか。
ゲームデザインの仕組みの解明がおかしかったり、ライターの描写に「ウソ」があったりすれば、すぐにピンとくる。
弁護士が主人公の小説なら、まあ、少しはデタラメ書かれても気づかないけど、この設定、この主人公で、誠実さを欠いていれば、すぐに気づく。
「シューティングの必勝法と文章のそれは一緒なんですよ」
なんてセリフがある。
「記述者が理解している真実より、もっと深いものが勝手に伝わることもあるのですよ」
なんてセリフがある。

ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

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