きりーつ 気をつけ れい
暗殺!

『魔人探偵脳噛ネウロ』の作者、松井優征の新連載「暗殺教室」が「ジャンプ」ではじまりましたが、いやあ。
一話から全部出し切っている感が半端じゃないです。
読んでない人は今すぐ「ジャンプ」を買いに行こう!
どこが面白いのか箇条書きでまとめてみます。

1・設定の見事な出オチ感
いきなり出オチです。最初の数ページでこのマンガの全てを出し切ってます。
舞台は教室。朝の挨拶で銃を構えた生徒たちが一斉にタコ型の先生に向かって発砲する……のだけど一発も当たらない!
実は持っている銃はBB弾のようなもので人間にあたっても無害。この先生(?)にだけはあたると豆腐のように破壊する、国の開発した特殊弾。

先生は言います。
「だが君達の目に入ると危ない。先生を殺す以外の目的で室内の発砲はしないように」
あれ、いい先生じゃん。なにこれ。
ジャンルを付けるなら、ハートフル暗殺学園もの。なんでこんなわけわからん設定思いつくのかね。

あとこれ、勝てるの?

2・先生がチート
これはネウロを見ていた読者なら分かると思います。強いとか弱いとかじゃない。もうチート級に先生が強い。
クラスにやってきた先生は月の7割を爆破。マッハ20で移動ができます。
そんな相手にミサイルを撃っても当たるわけもなく。
ナイフや拳銃を向けてもあたるわけがなく。
どーすんのこれ! 勝てないじゃん!
このマンガ、説明のセリフが極めて独特。
「だがこいつはとにかく速い!! 殺すどころか眉毛の手入れをされてる始末だ!! 丁寧にな!!」
「最新鋭の戦闘機に襲われた時も…逆に空中でワックスをかけてやりましたよ」
「しかもあのタコ音速飛行中にテストの採点までしてるんだぜ」「マジ!?」「うん俺なんかイラスト付きでほめられた」
細かいな!
チート能力を持っているのみならず、余計なことをするのが先生流。そういう行動を見るだけでも面白い。「ぼくの考えた最強の侵略者」をつめあわせたような変態キャラが誕生してしまいました。

3・地味にハートフル
月を爆破し、地球を1年後の来年3月に爆破予定の先生。
殺せないので通称「殺せんせー」。
本気を出せば今この瞬間に地球破壊なんて簡単にできる力の持ち主です。
なのですが、とある中学校の3年E組の担任ならやってもいい、と謎の発言。かくして3年E組の担任は、殺せんせーになりました。
えーと、どこからつっこめばいいんだ?
クラスメイトは別に暗殺者集団でもなんでもないです。ごく普通の子達です。

先生は自分から生徒に攻撃を加えることは絶対しません。
「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員それができる力を秘めた有能な暗殺者だ」
一見いいセリフに見えますが、それってどうなんだろうと突っ込まざるを得ません。
生徒たちは拒絶したいところですが、彼を殺せば報酬100億円がもらえると聞いてやらざるを得なくなります。なんて適当な「すごそうな」金額! 地球破壊者倒すんだからもっとやれよ!と突っ込みたいところ。
主人公はおかしくなってしまった状況を、こう捉えます。

「異常な教育が僕は普通にうれしかった。この異常な先生は…僕等の事を正面から見てくれたから」「この先生なら…殺意さえも受け止めてくれるって」
ほほう……なるほど、そういう見方もあるのか。
ここが、この作品のキモ。

4・主人公がかわいい
主人公の少年、渚くんがとにかくかわいいです。
女の子のような華奢な容姿と、ツインテールみたいなくせっけが素晴らしいデザインだというのもあるんですが。彼の心理描写がすごくよいんですよ。
ネタとしてはトンデモな化物がやってきて、なぜかクラスの担任になって「殺しなさい」と言ってくる、奇妙極まりない状況です。
けれど彼の悩みはそっちじゃないんです。落ちこぼれになってしまって「E(エンド)」組に入れられ、期待も警戒も、認識さえされなくなった。
自分が誰にも認められない哀しみのほうが、彼にとっては重いんです。
設定はキテレツではありますが、このへん実は極めてジャンプ王道的な作品なんです。誰にも認められない思春期の哀しみを背負った主人公。誰もが恐れ狙う殺せんせー。加えてジャイアン的キャラと落ちこぼれな主人公が出てくるあたり、ドラえもん的ですらあります。
殺せんせーは、僕を認めてくれた。殺さねばいけない対象だけど、親切にみんなに接し、勉強を教えてくれる。生き方をしっかり語ってくれる。
「暗殺」というのを挟んだだけで、根本は熱血教師物と同じです。……さしはさんだものが普通じゃなさすぎますね。
けれど今までほめられたことのない主人公がほめられ、微笑む姿は結構キュンときますよ。暗殺する相手だけども。

出オチ感半端じゃない作品ですが、だからこそ今後、クラスメイトとの親睦を深めるのか、主人公の心理が狂った状況でより描かれるのか、非常に興味がわきます。多分先生のチート機能もまだまだでてくるはずでしょうし。他のクラスメイトがどういう行動を取るのかも楽しみです。
1年の期限つきで、倒さないと地球が爆破されるとはいえ、今はこちらは危害が加えられず、どう倒せばいいかだけ描かれているのがこれまたユニーク。安心感の上に成り立った暗殺思考ゲームでもあります。
これはすごい作品きましたよ。毎週どうなるのか読めなさすぎる作品になりそうです。見逃すな!
(たまごまご)