ふとラジオを聞いていたら、札幌のとある書店の売り上げランキングが発表されていたんですね。
一位が『NARUTO』で、あと『銀の匙』とか、まあそうだよねーなんて思っていたら5位が『となりの関くん』で驚愕しました。

はぁ!? えっ!? いやぼくも好きだけどそんな売れてるのこれ?!
もっとも数値の発表されていない、札幌一店舗の話ではありますが、でも最近は一部のコンビニに3巻並んでいることがあるくらいです。フラッパー編集部尋常じゃないプッシュしています。
これはどういうことなんだ。帯がSKE48の子だったりするんですが、なんちゃって絶賛じゃなくてガチ絶賛している。
なにがおきているんだ。
 
そもそも『となりの関くん』ってどんなマンガだよって話なので、まずは簡単に解説します。

一番後ろの窓側隅っこの席の関くんが、授業中にさぼって遊ぶだけのマンガです。
いやほんと、それだけです。いやほんと。
ラジオのパーソナリティが「3巻まで続いているのに驚くよ!」と言っていましたが、全くです。
やっているのは、パラパラマンガや将棋、消しゴムハンコにままごとなどのベーシックなものから、ジオラマ制作、茶道、果ては化石の発掘までやります。
すごいよね。
机の上ワンダーランドすぎですね。
とはいえ、一話完結で「それだけ」なんです。
じゃあなぜこんなにも売れるのか。

ひとつは誰もが行なっている共通体験だから、でしょう。
さすがに化石の発掘はしませんが、パラパラマンガは授業中みんな描いたことあるでしょう。
そうじゃなくても、描いている子に注意をしたりとかね。

学園ものマンガはたいてい、スポーツやラブコメなど過去の体験の、擬似再体験か憧れでできています。
だとしたら、『となりの関くん』の擬似再体験のパイの大きさは尋常じゃありません。多分90%の人は経験しているんじゃないでしょうか。授業中の遊び。
そういう意味では書店でじっくりマンガを探す層よりも、コンビニとかにふらっと立ち寄ってマンガを買う層にぴったりかもしれません。表紙見た時点でどんなマンガか一発でわかりますしね。


ふたつめはツッコミ役の横井さんの存在です。
もうちょっというと横井さんがめちゃくちゃかわいいということです。
いやいや、自分の好みもありますが、作品を引っ張る重要な要素として。
言うなれば、横井さんの存在って昔の学研の学習や科学のヒロイン役と似ているんですよ。
暴走する男の子がいて、それに対してツッコミをいれて歯止めをかける女の子。
だけど、完全に鼻で笑うわけじゃなくて、自分の領域に入ってきてくれて、一緒に遊んでくれる側面もある。

多分横井さんを見て、子供の頃感じたムズムズしたときめきを思い出す人は多いはずです。
基本横井さんは関くんの遊びを横で見ていて、やめさせようとする役まわり。このマンガ、9割方横井さんの一人称で進みます(たまに後藤さんという移動教室のみで出てくるキャラの一人称になります)。
男の子からみたら横井さんはお姉さんというか、お母さんみたいな役回りなんですが、これ女の子から見ても共感しやすいんですよね。
「ちょっと男子やめてよー!」って言ったことのある女性の方多いんじゃないでしょうか。学生時代って女の子のほうが精神的に成熟してますしね。
男の子ガキだからね。
関くんの行動を見ていらだちを感じながら、ちょっと一緒に遊んでみたかったり、時には彼を貶めたりと繰り広げられるささやかなバトル。
恋でもなんでもないんだけどとても楽しそうだから、男女ともに楽しめるんです。

みっつめは非言語コミュニケーション描写
実は横井さんと関くん、隣の席なのでものすごく接触は多いのですが、会話シーン皆無です。
それもそのはず、だって授業中ですから。会話なんてできません。
横井さんが先生や友人と会話したりするシーンはあります。関くんも友達と(セリフないですが)話しているシーンはあります。
けれども二人は会話らしい会話はほとんどしません。
本当の緊急時(関くんの遊びが見つかりそうなときや、ムカツイた時)は小声で横井さんが関くんに注意しますが、それ以外では言葉ではないコミュニケーションを用います。
主に彼女のメインコミュニケーションは、消しゴム。弾いてぶつけることで関くんの行動に干渉できるアイテムです。あー、やったやった。消しゴムぶつけた。
横井さんは基本的に関くんの遊びをやめさせるべく(授業の妨げになるので)行動しますが、次第に関くんの完璧なクオリティの「遊び」に惹かれ、一緒に楽しむことも増え始めます。もちろん会話はなし。横井さんのモノローグは入りますが、関くんのセリフは皆無です。
関くんはというと、基本一人遊びなんですが横井さんに「一緒に遊ぼう」とアプローチをかけてきます。しゃべるわけじゃなく、視線で誘います。
この二人の非言語コミュニケーションがとにかく面白い。3巻も続いているのにほとんど会話をしない、けれどほとんどツーカーの仲で、はたからみたらまるで恋人同士にすら見える、けど恋人同士でもなんでもない。この微妙な関係がめちゃくちゃ魅力的なんです。

非常に地味なマンガで、ドラマチックな出来事も起きませんが、だからこそ続いて欲しい学園生活、ビューティフルドリーマーなのがもうひとつの魅力です。
世界死ぬほど狭いですからね。半径机一個分の世界ですから。
できればかつて子供だった大人がちょっと一息つきながら読んでみて欲しいです。
にしても横井さんはおっぱいも大きいしむちむちでしかも心根が優しいとか、学生の理想みたいな女の子ですね!結婚したい。

『となりの関くん』1巻
『となりの関くん』2巻
『となりの関くん』3巻

(たまごまご)