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「研究材料にあなたの精子が欲しいの」77歳・筒井康隆の初ラノベ

2012年8月22日 11時00分

ライター情報:たまごまご

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『ビアンカ・オーバースタディ』筒井康隆/星海社
筒井康隆、77歳にしてライトノベルを執筆! といっても中身はいつもの筒井節満載の、メタラノベSF。特にヒロインのビアンカが男子の精子を絞りだすシーンが最高ですのでぜひ読みましょう。

[拡大写真]

帯にはこう書いてありました。
「それは2010年代の『時をかける少女』」
嘘だっ。
いや確かに時はかけるけどさ。かけてるの時だけじゃなくて精子でしょ。
匂うのはラベンダーの香りじゃなくて、栗の花の香りでしょ。
77歳。毒っけ満載の筒井康隆節は健在でした。
星海社FICTIONS『ビアンカ・オーバースタディ』CM - YouTube
一応公式CMもありますが、これ見たって全然わかんないよ! 罠だよ!
 
『ビアンカ・オーバースタディ』は星海社から出された、筒井康隆初のライトノベルです。
SF作家として名を馳せた彼は、1993年に一度表現の問題でもめて断筆宣言をして騒ぎになりましたが、その後の復帰に伴いさらに自由に、音楽・演劇など枠を飛び越えた活動をしています。
そこにきて、まさかのライトノベル

といっても、そもそも「ライトノベル」という言葉がなかった時代に、ジュブナイル小説的なものを書いていたこともある筒井康隆。それこそ『時をかける少女』がそう。1967年なんですよね。
あれれ、それなら確かに「2010年代の『時をかける少女』」でもいいんじゃないの?っていうか元祖みたいなもんじゃないの?なんて思って読んでいたんですが、違う違う。

この小説、二重構造になっています。
ひとつは純粋にライトに読めるライトノベル。
もう一つはメタ的にライトノベルをパロディ化して取り込んでしまっている筒井康隆思考。
文体は非常に軽快でわかりやすい。ヒロインのビアンカが一人称で生物学についての興味を語ります。
なのでラノベ慣れしている人、筒井康隆を知らない人が手にとって読んでもちゃんと楽しめるはずです。
破天荒でなんでもやっちゃうヒロインビアンカのかわいさ! 一気に広がる後半のびっくり展開と、自分たちが世界を救うかもしれないというワクワク感!
いやー、実にラノベ的。

ところが素直に飲み込もうとする人も、絶対途中で引っかかるはずです。
なんせ章タイトルが、モロです。
「哀しみのスペルマ」
「喜びのスペルマ」
「怒りのスペルマ」
「愉しきスペルマ」
「戦闘のスペルマ」
隠喩でもなんでもないですよ。精子です。人間の。ちゃんと哀しみだったり戦闘だったりしてますから、嘘偽りないです。
高校生の少女ビアンカは生殖の研究に非常に興味を持っていて、それでウニの研究をしています。でも見たいんですよ、人間の精液を。精子が泳いでるのを見たいんですよ。
それでおどおどした少年塩崎くんに声をかけて「研究材料にあなたの精子が欲しいの」とズバーンと切り出します。
このびっくり展開も、確かに今のラノベならいいそうではあります。

ライター情報

たまごまご

フリーライター。「ねとらぼ」「このマンガがすごい!WEB」などで執筆中。ひたすらに、様々な女の子の出てくるマンガを収集し続けています。

URL:たまごまごごはん

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