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スーパーマンがアメリカでヒーローやってるのはただの偶然なんだ『スーパーマン:レッド・サン』

2012年8月31日 09時00分 ライター情報:tk_zombie

『スーパーマン:レッド・サン』マーク・ミラー (著), デイブ・ジョンソン (イラスト), キリアン・プランケット (イラスト), 高木 亮 (翻訳)/小学館集英社プロダクション
同志よ!今こそ革命のときだ!といわんばかりのスーパーマン。ソビエト連邦育ちだけに、胸に光るのはアルファベットのSではなく、労働者と農民のシンボルである鎌と槌です。

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その宇宙船が12時間早く墜落していたら
そのスーパーマンという男は
アメリカ国民だったんだよ

「アメイジング・スパイダーマン」「ダークナイト・ライジング」「アベンジャーズ」、アメコミ原作の映画が人気だけど、一番最初に知ったアメコミヒーローはスーパーマンだった。日頃はメガネの新聞記者だけど、電話ボックスに入ってワイシャツをはだけるとSの文字。出てきたときには全身タイツに赤いマントで大空に舞い上がる。「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」

でも何でスーパーマンがアメリカで悪と戦っているのかといえば、結局のところはただの偶然。乗ってた宇宙船が落ちたのが、アメリカのカンザスの小さい農場だったからだ。まあアメリカは大きい国だから日本に落ちるよりは確率は高いと思うけど、地球にはもっと大きな国もある。たとえばロシア。スーパーマンが落ちてきた20世紀前半にはまだ共産主義のソビエト連邦だった。そこにスーパーマンが落ちたら一体どうなるか? そんな設定の歴史改変アメコミが「スーパーマン:レッド・サン」だ。

アメリカに落ちたスーパーマンは自由と平和を守るために世界征服を狙う悪の科学者と戦うヒーローだった。真面目で清廉潔白な優等生。ソ連に落ちても性格は変わらない。そのきまじめさで共産主義の理想を突き進めるから、ものすごく面倒見が良いスーパーヒーローになる。人民を救うために戦う相手は、悪役ではなく頻発する列車事故や化学工場の爆発。つまり人災だ。共産主義的世界ではみんな平等だから、突出した悪人も存在しない。悪はちょっとした手抜きや弱さとして、各人が少しずつ抱えるものなのだ。ソ連全土でその悪から人民を救うたびに人望は否応無しに高まっていき、スターリンが死去したあと「君しかいない!」と党首就任を求められる。一度は「特別な力があるからといって、社会主義共和国の指導者にふさわしいとはかぎらない/同志諸君、そうした考えは我々の教義と完全に矛盾するものであろう」(43ページ)と固辞したものの、気分転換に光速で空を飛んだ後にふと街に降り立つと、そこには飢えながら配給のために並ぶ人民の列。自分ならなんとかできる。いや、しなくてはならないんだ!
「同士諸君、仲間に伝えてくれ。恐怖に怯えたり、飢餓に苦しむ時代は終わる。/スーパーマンがこの国を救ってみせる!」(57ページ)
こうして党首に就任したスーパーマンは、持てる能力すべてをつぎ込んでソ連を救っていく。
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