だってね、背表紙がある、つまり本の角で頭殴れるような平とじになってるんだもん。
ファミ通といえば、当初からホッチキス2つの中綴じのイメージが強い。
加えてファミ通の表紙って昔から、グラビアアイドルか、ゲームのキャラか、松下進のアメコミ調のイラストかどれかであることが多いのに、今回はカプコンの新作カットずらっと並べているだけなので、お馴染みの「ファミ通臭」がしない!
な、何が起きたんだ……。
ファミ通の平とじ自体は何度かありました。
雑誌内で『いい電子』を描き続けているみずしな孝之も「5号連続の平とじ増ページ期間も終了、通常営業に戻りました」と2006年に書いています。その後も平とじファミ通は、ページが多い場合発刊されます。
しかし、平とじだと作家さんの締め切り2日早くなるんですね。
じゃあ今回もページ数増えたから平とじなんだねー、と思ってここしばらくのページ数を見たら。
252ページ→平とじ(今号)
269ページ、258ページ→中とじ
???
うーん、基準がよくわかりません。
ここで、20世紀のファミ通(1995年までは「ファミコン通信」)と、21世紀のファミ通を比べて、変わったところ、変わってないところを挙げてみようと思います。
ファミ通の変化をみると、時代の変化が見えてくるのです。
●変わったところ●
・ゲームの新作情報中心になった
90年代に入る前までの「ファミコン通信」の頃は、そもそもハードの数が多くはなく、一週間に発売されるゲーム本数もそれほどでもありませんでした。なのでどんなに頑張っても新作情報量は限られてきます。
しかし今では載せきれないほどのゲームが発売されます。最近はアプリやソーシャルゲーム最新作まで載るように。
そりゃー、150ページだったページ数も、250ページ超えになるってもんです。
今でも攻略法などは、マリオやパワプロなど載っていますが、基本「新作情報」「インタビュー」「新作カット」がメイン。「ファミコン通信」時代は紹介も多いけど「紹介という名の攻略記事」が多かった、というのは大きな変化点。
新作ゲームカットも、今はキャラ立ち絵やゲーム内グラフィック切り出し絵を載せることが多くなりました。昔は画面キャプチャがメインだったので、紙面レイアウトは全く別物。
加えて、子供向け任天堂情報は「ファミ通DS+Wii」に移したり、360洋ゲー情報は「ファミ通Xbox360」が扱うなど細分化が激しくなっています。他社からは「ファミコンマガジン」のような競合ではなく特化した雑誌が増えている中、「最新の情報ソース」であることで雑誌の地位を保っているのが「ファミ通」です。
ファミ通.comがあるので、それもなかなか大変でしょうけれども……。
・コラムがガラリと変わった
20世紀ファミ通は「読む本」だったファミ通。今は「見る本」になってきています。
カット絵のレイアウトが大きく変わったのもひとつの要因ですが、ライターによる自由気ままなコラム類が大きく減ったからです。
どのくらい自由気ままだったかというと、ライターが完全私感でゲームをまる一ページ語ったり、ドット絵講座が載っていたり、次世代ハードについて占いで今後を見てみたりと、かなり尖っていました。
地域の小ネタなどの情報も多く、まさに「雑誌」の「雑」感が強調されていました。水玉蛍之丞などのイラスト入りコラムも覚えている人は多いはず。
初期ファミコン通信では、エキレビライターのとみさわ昭仁が、「スーパー出前一丁」というコーナーで旬のアイドルに取材にいって、ゲームの話をするコーナーを担当していました。文章はとみさわフリーダムな内容になっているので、読める機会があったら是非ご一読を。
現在コラムを連載しているのは、次長課長井上、矢口真里、伊集院光、桜井政博、須田剛一。桜井と伊集院のコラムは今も昔も全く変わらぬ「コラム」っぽさを持っているので、貴重。その他は全体的にオシャレです。本誌ライターが書いた系統のコラムっぽいものは、ほぼ無くなってしまいました。
にしても、伊集院光のコラムはふりがながついていて、矢口真里のコラムはふりがな無し。この違いはなんだろう?
・「禁断の秘技」がない
「禁断の秘技」とは、読者投稿の裏ワザコーナー。
例えば「桃太郎伝説で8歳になるまでなら女湯に入れる」とか、「ファイアーエムブレム外伝であるコマンドを入れると隠しモードが出てくる」とか。
これを投稿するとファミ通チケット「ガバス」とおもちゃ券がもらえました。
まあ載っているのは大抵ゲームクリエイター側が用意した隠し技なんですが、バグ技もあるのでなかなか難しいところなんでしょうけれども。「禁断の秘技」目当てにファミ通を買っていた読者は少なくないはず。
今は一切ありません。
ちなみにこの「ガバス」システム、投稿ややり込みなどでもらえるシステムはまだ残っていて、ガバスを集めるとゲーム機やゲームソフトと交換できます。ただしファミ通についていた補助券ガバスチケットは今はありません。
・ゲーム帝国がない
2005年になくなりました。
基本1ページで、読者の投稿に総統が答えるというページなんですが、もうゲームなんかそっちのけの狂った投稿、それに解答する狂った総統というめちゃくちゃなページでした。
ゲーム帝国をまとめた本が7巻まで出るくらいには人気のあるコーナーでしたし、ファミ通編集部側も終了後、名物コーナーとして何度か記念復活させたことがあります。
こうしてみると、20世紀はいかに「雑誌」の「雑多」な部分を盛り上げるか考えていたことがよくわかります。
・ゲームのレギュラーコーナーがある
最近重要になりつつあるコーナーなのが、人気ゲーム作品のレギュラーコーナー。
今だと「オレたちモンハン族3G」「ファミ通ドラクエ部」「ポケモンふぁみちゅう団」などがあります。
ここはライターが自由に企画を練っているため、ただの紹介や攻略では終わらない、個性の出ているページ。加えて読者が参加できるような仕組みを考えて作っているので面白いです。ページの柱の青色が目印。
参加といっても「禁断の秘技」と違って、あくまで編集部の企画に乗ってイラスト投稿したりアンケートに答えたり、なんですが、「攻略」「紹介」「参加」を満たす意味では非常に注目すべきコーナーです。
・レトロゲーコーナーがある
あるんですよ。というのも、Wiiや3DSのバーチャルコンソールがあるから。
昔載っていたゲームも、今はレトロゲーとしてどこが面白いのか紹介されています。
不思議な感覚です。
・電子書籍版がある。
bookwalkerで配信始まっています。かさばることを考えると、これは便利ですね。
●変わっていないところ●
・ファミ通町内会がある
このコーナー無くなったらファミ通じゃなくなっちゃうくらいの重要なページ。読者投稿欄です。
やはりあくまでもファミ通は「読者とつながる雑誌」なのは芯です。
昔に比べて現在は「情報発信者と受け取り手」という構造に本がなってきています。時代の変化や、ゲームメーカーの在り方の問題もあるので仕方ないのですが、このファミ通町内会だけは読者が自由に羽を広げられるページなんです。
他のゲーム雑誌は上手い二次創作イラストで溢れかえっているのに、ファミ通町内会はオシャレから何億光年も離れた場所にあるネタ置き場。
特に「わたしの報告書」はTwitterよりも短い文章で一発ネタを書く長寿コーナー。
最近のお気に入りは「女性のスポーツ刈りは最高の避妊具」というネタです。太字をいかに使うかがポイント。
4コマの投稿も、ハイレベルなのかどうなのかよくわからないけれども、ファミ通世界で育まれた珍妙な文化として生き続けています。
ファミ通町内会は単行本にもなっているので、覗いてみてください。
・マンガの量が多い
今も昔もマンガの量が多いのは変わりません。
20世紀ファミ通を読んでいた人だと、桜玉吉の「しあわせのかたち」、竹熊健太郎・羽生生純「ファミ通のアレ(仮題)」、近藤るるる「天からトルテ!」など思い出す人も多いかもしれません。
今でも、直球ではない変化球作家として、和田ラヂヲ、福満しげゆき、中川いさみが載っているあたり、「ファミ通」のこだわりを感じます。最近柴田亜美の「ドキばぐ」が一回復活した時に「伝説のマンガ」と称されていました。
・クロスレビュー
今も昔も話題だったり問題だったりする大変なコーナー。ゲームに点数をつけるって難しいんだな!
形式は、今も昔も全く変わりません。人物画が荒井清和なのもずっと変わりません。浜村通信の顔が忘れられなくてナー。
●ぼくが感銘を受けたファミ通●
多分今年は、3DS、PSPvitaが出て、オンライン環境なども急激にかわり、ソーシャルゲームも無視できない存在になり……と、ゲーム雑誌としても難しい年なんだろうと思います。
今後ファミ通が平綴製本を増やしていくのか、元の中綴じに戻るのかわかりませんが、やはりファミ通ならではの「らしさ」は読者として求めたいわけです。単なるゲーム一次ソースではなくて、読む本であってほしい。
僕が今までの「ファミ通」で「これはすごい」と思ったものをちょっと書いてみます。
鈴木みそ「おとなのしくみ」
問題作です。ゲーム会社に直接ルポに行って、ゲーム会社の裏側を描くというマンガシリーズ。
楽しいね愉快だねばかりじゃなく、お金の面から見て今後どうなるかがむき出しになるギリギリのコーナーでした。
渡辺浩弐「1999年のゲームキッズ」
20世紀ファミ通に連載されていた1ページショートショートなんですが、これがネットやデジタルコンテンツを題材としたSSで非常に優秀。今は星海社から復刊しています。
読み物、雑誌としての「ファミ通」を象徴する連載でした。
近藤るるる「たかまれ!タカマル」
「天からトルテ!」ではファミ通編集部を舞台に魔女っ子たちがドタバタを繰り広げましたが、こちらは高校生がファミ通に対抗するゲーム雑誌を作るマンガ。その中で「スポンサー料を広告8ページももらっているのに、イマイチ面白くないゲームをどう扱うか」という問題を取り上げたときはギョっとしました。ファミ通が抱えている最大の難問でしょう。
詳しくは16巻に出ています。ゲーム雑誌は、「ゲーム雑誌批評」を本の中でやっていたのです。
ファミ通KONAMI特集号表紙
昔からファミ通の表紙はデザインが超秀逸でしたが、この号はすごかった。「↑↑↓↓←→←→BA」という、誰もが知っているコナミコマンドだけを入れた表紙は見事。プレイステーション特集では「△○×□」が表紙。いいですね!
ファミ通が長い歴史の中で、「読者・ユーザーとのつながり」「サブカルチャー雑誌としての役割」「個性のあるライター・マンガ家の輩出」を担ってきたので、どうしても動向は気になるもの。
今後どうなっていくのか、じっくり見守らせて頂きます。
(たまごまご)