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成功と引き換えに高まる人間不信、順風満帆の裏には苦悩『ナインティナインの上京物語』

2012年11月19日 11時00分

ライター情報:寺西ジャジューカ

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『ナインティナインの上京物語』黒澤裕美/大和書房
お笑い界で、これだけ順風満帆な人生を送ってきたコンビも珍しい。……が、その裏にある苦悩は数知れず。「人は信用したらアカン」と、岡村は何度も口にしたそうだ。

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私は1978年生まれなのだが、高校時代に何が流行っていたかハッキリと挙げることができる。まず、内田有紀。物凄い上昇気流に乗り、完全に一世を風靡していた。ショートヘアの魅力を心の底から思い知らされたのは、あの子が初めてかもしれない。
次に挙げられるのは、何と言ってもMr.Children。時は“渋谷系”の全盛だったが、学校内の我々は、どこ吹く風。クラス中、ミスチル一色だったと言っても過言ではない。

そして、彼らを忘れちゃいけない。実は、ナインティナインの衝撃が凄かったのだ。今でこそ居て当たり前の存在となったが、『とぶくすり』スタートと同時に世に躍り出た彼らの鮮烈っぷりは、何かを期待させるに十分なインパクトを携えていて。センスとキレとハングリー。何をとっても、高校生のハートに思いっきり“ズキュン!”と来たもんだ。
この感覚、他世代からするとまるで腑に落ちないものなのだろうなぁ。いや、本当なんですよ?

それを証明するのは、東京進出後の彼らの出世街道。『ジャングルTV』、『浅草橋ヤング洋品店』、『笑っていいとも!』などなど、彼らは続々とレギュラーを獲得していってしまう。傍から見てると「『芸人』って、美味しい職業だな」と、勘違いしまうほどに。これ以上ない順風満帆な物語を、彼らは見事に演じていたのだ。
……しかし、当人たちは人には言えない苦労を重ねていた模様。それを20年越しに明かすのは、上京時のナイナイにマネージャーとして付いていた黒澤裕美氏が記した『ナインティナインの上京物語』(大和書房)。

同書を読むと、そこには彼らなりの下積みが記録されている。何しろ我々を夢中にさせていた『とぶくすり』の内幕は、実は以下のようなものであったらしいのだ。
「ボケる前に『あの~ちょっと……』でも、『挙手する』でもいいから、とにかく『これからボケる』というサインを出して、一回カメラを自分に向けさせろ、と徹底的に教育されたらしい」(著者・黒澤による記述)
こんなこっ恥ずかしいことがあるかよ! 笑いを取りにいく寸前に手を挙げ、「今からボケますよ」と表明しなければならないだなんて。テレビ慣れしていない芸人がカメラが来ていないにも関わらずボケを連発し、まるで映っていないという事態を避けるための対処法だそうだ。コントとは何ぞや、バラエティーとは何ぞや、をナイナイが徹底的に叩き込まれた時代。

ところで。今でこそ“人を傷つけない笑い”を標榜している彼らだが、東京進出時の目つきの悪さと態度の悪さと言ったらなかった。

ライター情報

寺西ジャジューカ

1978年生まれ。ブライアン・ジョーンズとビートたけしと前田日明と大江慎也と有吉弘行と篠田麻里子が好きです。ブライアン・ジョーンズと菅井きんと誕生日が一緒。

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