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「サヤ」「グニ屋」「ドロ刑」警察隠語もりだくさんの『泥棒刑事』

2013年5月16日 11時00分 ライター情報:HK(吉岡命・遠藤譲)

『泥棒刑事』小川泰平・著/宝島新書
泥棒刑事とは窃盗事件を主に扱う捜査三課の刑事のことである。ドロドロになりながら捜査するという意味からも「ドロ刑」と呼ばれてる。著者の小川泰平は警察評論家であり、元神奈川県警の部長刑事。殺人事件を担当する一課や暴力団事件を担当する四課と比べて地味な三課だが「ドロ刑たちには警察の屋台骨を背負っているという自負がある」と著者は言う。刑事ドラマや映画にもなかなか登場しない泥棒刑事たちの活躍を知ることができる一冊だ。

「ドロ刑」と呼ばれる刑事たちがいる。
泥棒だけで生計を立てている、いわゆる「職業泥棒」の逮捕、取り調べを専門に行う捜査三課の刑事である。

宝島社から発刊された新書『泥棒刑事』は、普段あまりスポットをあてられないドロ刑の仕事が書かれたノンフィクションだ。
著者の小川泰平は、神奈川県警捜査三課に所属していた元部長刑事。本書は、退職までの30年間、現場一筋だった著者の経験と見聞を元に書かれたものである。
ドロ刑は様々な手法を駆使して検挙を目指す。さまざまな捜査手法や泥棒たちの犯行手口、一風変わった泥棒列伝、人情派刑事のちょっといい話、さらには警察内部事情についても言及されている。

本レビューではドロ刑の捜査手法を中心に本書を紹介していく。文中で多用される警察用語(隠語)の奇妙な味わいにも注目だ。


【雄弁なブツと質屋のオヤジ〜ナシ割り捜査〜】

ナシとは「品」を逆さにした言葉。つまり、盗品の出所をさぐり、ホシ(被疑者)のサヤ(自宅)などを特定する捜査である。泥棒は貴金属や高級時計など金目のものを盗み、グニ屋(質屋。9−2=7が由来)で現金に変えることが多い。これをグニ込みと呼ぶ。ドロ刑は地域の質屋のオヤジと親しくして捜査の協力を求める。質屋の記帳に残された筆跡が証拠になることもある。


【泥棒にも個性があるんです〜手口捜査〜】

日本で活動する窃盗常習者は沈んでいる者(服役中。お勤めとも)を含めて約3000人いると言われる。過去の犯行手口のデータを蓄積し、分析することで犯人を割り出す。侵入経路や物色方法、オドリ(犯人の現場での振る舞い)などなど、泥棒にも個性があり、これらを特癖と呼ぶ。古くは江戸時代からドロ刑の捜査手法として行われてきたプロファイリングの一種だ。


【前科持ちはやっぱり怪しい?〜的割り捜査〜】

たとえば同一手口の空き巣事件が特定地域で多発しているとする。手口分析の結果、マエモン(前科者)の中からお勤め中のホシを除外して10名程度に絞り捜査を開始する。これを的割り捜査という。捜査の順番は、ギャンブル場などの立ち回り先の捜査、的の顔を拝む(確認するという意味)、尾行、ヤサの確認、行動確認、犯行を確認、オフダ(逮捕状)の請求、逮捕、取り調べ、と進む。
一度でも過去にホシを担当したことのあるドロ刑であれば、ホシがどのような場所をヤサに選ぶのか、ギャンブルなら何が好きで、競馬が好きならどこの競馬場へ行くのか憶えているのだという。

ライター情報

HK(吉岡命・遠藤譲)

男子2人組の編集者&ライターユニット。ノンフィクション書評、労働・貧困問題、ネット右翼、炎上検証、突撃ルポなど。お仕事のご依頼はツイッターまで。

URL:Twitter:@HKeditorialroom

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