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『反省させると犯罪者になります』を読んで愕然

2013年6月19日 11時00分

ライター情報:米光一成

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『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹/新潮新書)刑務所での累犯受刑者の更生支援に関わっている著者による価値観を揺さぶらされる一冊。

「悪いことをしたら反省するのが当然」「反省してもらわなきゃ困るよね」って考えてると、どんどん犯罪者が増えるよ。
ええええー!?
さらに、自分の子供を犯罪者にしてしまうよ。
って、ええええー!? どゆこと?
と驚きながら読み進めていった。
『反省させると犯罪者になります』
すごいタイトル。
でも、読んでいくうちに納得してしまう力がこの本にはある。

第3章に、女優酒井法子の事例が登場する。
覚醒剤取締法違反で逮捕された彼女は、“自らが犯した事件を謝罪する目的で、「贖罪」というタイトルの著書を出版”する。
これが、まさに「模範的な反省文」になっているのだ。
“これでは自分自身をみつめたことにはなりません。酒井さんには失礼ですが、書名を「贖罪」とするには、内容としては表面的でしかありません”。
また、保釈された後の記者会見での言葉を引用し、“自分の弱さ故に負け”“自分の弱さを戒め”“二度と手を出さない”といった部分をピックアップして、こう指摘する。
“反省することの問題点が、この文面に集約されています”。
彼女は本当に反省しているのか、彼女は本当に弱かったのか。

著者の岡本茂樹は、刑務所の篤志面接委員やスーパーバイザーとして受刑者を支援している。現場でつちかった方法論や試行錯誤が、本書にはしっかりと描かれている。

まず、そもそも「すぐに反省なんてできない」という事実だ。
にもかかわらず、すぐに反省を求めたり、何の手順も踏まずに反省文を書かせたりする。
受刑者たちは、模範的な反省をつくりだす。
「自分が弱かった」「自分がいかに甘く、駄目な人間であったのかがよく分かりました」
反省していないのに、反省の言葉を語り、りっぱな反省文を書く。
そうしなければ、刑期は減らないし、世間が許さないからだ。
これが、自分の内面と向き合う機会を奪うことになる。
「自分が弱かった」と上っ面だけで反省することで、強くあらねばという思考になる。
鬱屈した思いに蓋をすることになる。抑圧を生む。
自分に厳しくなる。そうなると、助けも求められない。
自分だけでどうにかしようとする。

受刑者は被害者に対する「負の感情」を秘めている、と著者は主張する。
そんな状況で、無理に反省させても、反省することはないだろう。
では、どうすればいいのか。
反省させない。
まず、被害者に対して不満を語らせる。
「あいつさえいなければ、俺は刑務所に来ることはなかった」なんてことを語る受刑者もいるらしい。

ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

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