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その美学が通用するのは10年前の出版界だ。大ヒットマンガ『重版出来!』衝撃の展開

2013年11月8日 11時00分 ライター情報:大山くまお

『重版出来! 』2 松田奈緒子/小学館

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出版業界に身を置く者なら、誰しもが好きな言葉が「重版」だ。これは間違いない。重版がかかれば、重版印税が手に入る著者だけでなく、出版社も、書店も潤う。かくいう筆者も、米光一成さんとともに「どうすれば重版するのか?」という重版を研究したトークイベントを開くほどの重版好きである。このイベントの書き起こしは電子書籍化されているので、ご興味ある方はこちら(itunes「電書カプセル」)からぜひ。

それはともかく。マンガ雑誌「バイブス」の編集部を舞台に、そのものズバリ「重版」をテーマにしているのが、松田奈緒子のコミック『重版出来!』だ。タイトルは出版業界の用語で「じゅうはんしゅったい」と読む。1巻が発売された当時、大きな話題を巻き起こしたので、この読み方を覚えてしまった人も多いだろう。

1巻のキモになっていたのは、地味ながら良質なコミック『タンポポ鉄道』をベストセラーにしていく物語だ。出版社の営業部と編集部による初刷部数の攻防戦から、営業部による「仕掛けていく」という決断、書店への地道な営業が重版という形で花開くまで、リアルな重版ストーリーが展開されていく。

「売れた」んじゃない。俺たちが――売ったんだよ!!!

と、出版社の営業部員たちと書店員たちがドン! と見開きで見栄を切っているページはかなりのインパクトだ。実際、書店員にこのマンガのファンは多く、話題に火がついたのも出版業界人と書店員らのツイッターからだった。関係者に多くの取材を積み重ねたとあって、出版業界・書店業界に足を踏み入れたことのある人なら、「ああ、重版するときはこういう展開になるよね」と共感できる内容だったはずだ。

また、主人公たちのひたむきな仕事ぶりに感化され、巻き込まれた人々が、次第に『タンポポ鉄道』の重版に向けて一致団結していく様子は、多くの働く人たちの胸を打ち、『重版出来!』そのものもめでたく重版と相成った。

編集者はおもしろい本さえ作っていればいいのか?

そして先月、待望の2巻が刊行された。今回はなんと重版がテーマではない。主人公の新米女性編集者・黒沢の奮闘により力点を置いた物語になっている。

2巻は大きくわけると次の3つのエピソードになる。

・デビュー作がヒットして10年描き続けている漫画家が、他誌からの引き抜きに遭う話。
・SNSを使ったパブリシティに抵抗を感じるマンガ雑誌の編集者の話。
・コミックの電子書籍化を進めていたら、過去のヒット作を描いた作者が「消えたマンガ家」になっていたという話。

ライター情報

大山くまお

ライター。著書に『野原ひろしの名言』『野原ひろしの超名言』(双葉社)、『名言力』(ソフトバンク新書)、『中日ドラゴンズあるある』(TOブックス)など。

URL:Fire Stone and Water

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