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『あぶさん』完結宣言で振り返る、景浦安武の野球人生

2013年12月20日 11時00分

ライター情報:オグマナオト

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連載終了が発表された『あぶさん』(水島新司/小学館)。連載開始時(1973年)の南海の監督はプレイングマネージャー時代の野村克也。1巻の表紙にはこの二人が描かれている。

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野球漫画の金字塔『あぶさん』が来年2月5日発売の『ビッグコミックオリジナル』(小学館)で完結することが発表された。
『あぶさん』とは、酒豪の強打者・景浦安武、通称あぶさんが主人公の野球漫画で、1973年から40年以上に渡って連載を続けてきた作品だ。プロ野球・南海ホークスにドラフト外で入団し、「代打専門」として活躍した後、ダイエーホークス時代にはレギュラーを掴み三冠王にも輝いた。そして2009年、62歳で現役を引退。翌年からはソフトバンクホークスの二軍助監督を務め、今年は一軍助監督に昇格……とホークス一筋の野球人生を歩んできた。
その間、結婚し、子供が生まれ、その子供もプロ野球の世界に入り、やがて同じチームへ……という大河ドラマを演じてきたのと同時に、リアルタイムでプロ野球の歴史も紡いできた点に本作の大きな価値がある。つまり、『あぶさん』を読めば、70年代以降のプロ野球の歴史(特にパ・リーグ)がわかるのだ。

70年当時のパ・リーグといえば、「人気のセ、実力のパ」という言葉の通り、球場には閑古鳥が鳴いていた状況が懐かしい。そこから80年代に入ると清原和博が西武に入団し、西武黄金期の到来とともに、パ・リーグの注目度が徐々に高まりを見せ始める。
以降も野茂英雄、イチロー、ダルビッシュ、そして田中将大など、球界を代表する選手は軒並みパ・リーグから出現。今季、東北楽天が日本一に輝き、セパ交流戦では毎年のようにパ・リーグ勢がセを圧倒しているように、「実力のパ」はますます高まりをみせている。そのバックボーンとして、地道にパ・リーグの人気を支えてきた『あぶさん』の存在も大きかったのではないだろうか。

本作の読みどころは、実在のプロ野球選手を相手に景浦安武が成し遂げてきた、凄まじいまでの打撃成績の数々だ。以下、代表的な景浦安武の日本記録を列挙してみたい。
◎3年連続三冠王(49巻~53巻)……現実には、王貞治、落合博満、R・バースの2年連続が最高。ただし、落合は通算3度の三冠王を達成。
◎打率4割(.401)を達成(91巻)……日本プロ野球史においてまだ誰も達成していない打率4割の壁。MLBの記録を見ても、1941年のテッド・ウィリアムズにまで遡らなければならない。
◎3度の4打席連続本累打(17巻・50巻・55巻)……過去には王貞治などが達成しているが、複数回の達成者はいない。
◎現役生活37年……プロ野球記録は工藤公康の実働29年。

ライター情報

オグマナオト

福島県出身。『週刊野球太郎』『web R25』を中心にスポーツネタ、野球コラムを寄稿。構成した本に『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』『福島のおきて』など。

URL:Twitter:@oguman1977

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