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どう発信すれば誰に届くのか。漫画で描き残す東日本大震災『ストーリー311』の選択

2014年3月11日 10時00分

ライター情報:松浦達也

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『ストーリー311 あれから3年 漫画で描き残す東日本大震災』ひうらさとる/青木俊直/うめ/岡本慶子/新條まゆ/二ノ宮知子/松田奈緒子/葉月京/ななじ眺/さちみりほ/おおや和美/角川書店

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その瞬間、僕はJR新宿駅にいた。その直前には、赤坂の博報堂ケトルで内沼晋太郎さんと一緒に、ニュージーランド在住のアウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さんにSkype経由で取材をしていた。取材は14時頃に終了し、赤坂で内沼さんと別れ、高田馬場の事務所に戻ろうと丸ノ内線を経由し、新宿で山手線に乗り込んだ。

電車がゆっくりと大きく、ゆらりと揺れた。正確な時間はわからなかったが、14時46分だったんだろう。揺れは一瞬ではおさまらなかった。船上にいるかのようなゆるやかで大きな揺れが続いた。生まれて40年間で体感したことのない揺れ──。これが僕の3・11だ。

誰にもそれぞれの「その瞬間」があったはずだ。そのとき、東日本にいた人なら克明に覚えているはずだ。単に「揺れた」からではない。その直後から起きた、経験したこともない出来事で、世の中の空気が一変し、「世界」が変わったからだ。あれから3年が経った。でも、世界はその前には戻っていない。

2013年3月11日、11組のマンガ家によって震災が描かれた『ストーリー311』が発売された。それから1年が経った今日、第二弾となる『ストーリー311 あれから3年 漫画で描き残す東日本大震災』が書店に並んだ。
今回のコミックスには、ひうらさとる/青木俊直/うめ/岡本慶子/新條まゆ/二ノ宮知子/松田奈緒子/葉月京/ななじ眺/さちみりほ/おおや和美という11組のマンガ家が参加した。前回から引き続いて参加した作家もいれば、今回の第二弾から参加したマンガ家もいる。第一弾の登場人物のその後を描いたマンガ家もいれば、自らや家族が“被災者”だという作家もいる。描かれたテーマは厚みを増した。

・事故の収束を願い、ただただ身をなげうって作業にあたっているのに、いわれもない非難を受ける原発作業員たち。
・「なすすべもなく彼女も黒い波に飲まれて行った」というテキストと同じコマに描かれた光景。
・「多くの家庭では──自分の敷地内で除染した土を入れた容器が行き場も無く置かれたまま」という描写。

今回の第二弾には、前作同様──いや前作にもまして、胸が締め付けられるような描写と記述が含まれている。そう、『あれから3年』にあるのは「マンガだからこそ、よりしっかりと読者に届く」震災の記憶だ。続けて読むと、前作よりも少し強いボールを読者に投げているようにも思える。

前作に描かれていたのは、“被災者”の心象風景が多かった。

ライター情報

松浦達也

ライター/編集者にして「食べる・つくる・ひもとく」フードアクティビスト。マンガ大賞選考員。近著に『大人の肉ドリル』(マガジンハウス)

URL:Twitter:@babakikaku_m

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