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十代から人を殺し、拷問する少年たち。この凄惨な現実を見よ『メキシコ麻薬戦争』

2014年3月26日 10時00分 ライター情報:HK(吉岡命・遠藤譲)

『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』/ヨアン・グリロ 著/山本昭代 訳/現代企画室
2006年から現在も継続中のメキシコ麻薬戦争。凄惨きわまりない遺体の写真をネットで見たことある人も多いだろう。本書はこのメキシコの負の側面を現場から描いたルポルタージュ。歴史、政治、国際情勢、文化、信仰、そしてマフィアや殺し屋たちへのインタビューから垣間見える彼らの素顔。これらを一冊にまとめあげた大作である。当初、ポップなカバーデザインと重厚な内容との間にややギャップを感じていたのだが、読み込んでいくうちに文字の箔がはがれていき、何とも不穏な表紙に見えてきた。計算されていたのならば凄い。間違いなく傑作だ。

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「メキシコ麻薬戦争」とネットで検索すれば、嫌でも凄惨な遺体の数々を目にすることになる。
遺体には、暴行を受けた痕跡が生々しく残る。頭部や四肢が切断されたものもある。それらが、まるで見せびらかすように路上に転がされている。まぎれもなく現代メキシコの一側面である。

2006年、メキシコ大統領に就任したフィリペ・カルデロンが撲滅を宣言したことで激化した国家と麻薬密輸組織(カルテル)との「戦争」は、ギャングだけでなく一般国民をも巻き込んで、現在までに推定7万人以上の死者を出していると言われている。
なぜこのような殺人が横行しているのか。カルテルとはいかなる組織なのか。
また今年2月、伝説の麻薬王とも呼ばれるチャポことホアキン・グスマンが逮捕された。その結果をうけて、麻薬戦争はどこへ向かうのだろうか。
当然、そのような疑問が生じる。

だが、地球の裏側で起こっているこの「戦争」について書かれた日本語の本は、翻訳されたものも含めて多くはない。ましてや、ノンフィクションとしてまとめられたものは私の知る限り皆無である。
ネット上には、画像や映像が溢れているにもかかわらず。

その意味で、3月に出版された『メキシコ麻薬戦争 アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱』は待望の一冊と言える。
著者のヨアン・グリロ(Ioan Grillo)は、メキシコ在住のイギリス人ジャーナリスト。『タイム』やCNN、AP通信などでラテンアメリカに関する報道を行ってきた人物だ。1929年から71年続いた制度的革命党(PRI)による支配が終わり、メキシコ国民が期待に包まれていた2000年に現地を訪れて以降、取材を続けている。

グリロが10年にも及ぶ調査をもとに書上げ、2011年にイギリスで発表したルポルタージュ『El Narco: Inside Mexico’s Criminal Insurgency』の邦訳が本書である。
「Narco」(ナルコ)とはメキシコの麻薬密輸人の呼称だ。今や自動小銃を構え、爆弾やランチャーをも所持する武装殺人集団となったナルコのグループ、カルテル。その闇の世界を、資本主義やグローバリズムの観点からグリロは考察する。

現在の惨劇の起源は、荒涼とした山岳地帯の農村にあった。
メキシコ北西部。アリゾナのアメリカ国境あたりからメキシコ内陸部まで約1500キロに及ぶ西マドレ山脈に接する州のなかでも、チワワ州、ドゥランゴ州、そしてシナロア州はメキシコ版黄金の三角地帯と呼ばれ、多くの麻薬が生産されてきた。

ライター情報

HK(吉岡命・遠藤譲)

男子2人組の編集者&ライターユニット。ノンフィクション書評、労働・貧困問題、ネット右翼、炎上検証、突撃ルポなど。お仕事のご依頼はツイッターまで。

URL:Twitter:@HKeditorialroom

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