今注目のアプリ、書籍をレビュー

「一人で作って何千万本も売れたゲーム」制作者の栄光と苦悩『マインクラフト』

2014年4月9日 10時00分

ライター情報:小野憲史

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ゲーム開発者のノンフィクションだけでなく、北欧ゲームシーンの資料としても一級品の『マインクラフト 革命的ゲームの真実』

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マクドナルドにコカ・コーラにハリウッド映画にリーバイス……。これまで数々のポップカルチャーがアメリカから生まれ、全世界を席巻してきました。しかし、ことゲーム業界に目を向けると、ここ数年おもしろい現象が見られます。フィンランド・スウェーデン・デンマークといった北欧地域が、どんどん力をつけてきているんです。

モバイルアプリ『クラッシュ・オブ・クラン』のスーパーセルはフィンランドの開発スタジオ。ソフトバンクが昨年1500億円で買収し、話題を呼びました。今やゲーム開発になくてはならなくなった、ゲームエンジンの『Unity』はデンマーク製。そして本書『マインクラフト 革命的ゲームの真実』の主役である、PCゲーム『マインクラフト』はスウェーデン製といった具合です。

『マインクラフト』については3年前にも「1人で作って100万本、ゲーム業界のシンデレラストーリー」としてレビューしました。レゴのようなサバイバルアクションで、プレイヤーはモンスターから身を守りながら世界を探検し、木を切ったり鉱山を採掘したりしながら、1m4方のブロックを切り出して組み合わせ、さまざまな建物を作り上げられるのが特徴です。

ところが今や、全世界で3400万本を売り上げるお化けソフトに成長しました。「ノッチ」のハンドルネームで知られる開発者のマルクス・パーションは億万長者となり、2011年にラスベガスで初開催された『マインクラフト』向けのイベント「マインカン」では、ファンからロックスターなみの扱いを受けることに。家族旅行にもプライベート・ジェットを使用したほどです。

ゲームの枠を越えた広がりも見せており、スウェーデン・フィンランド・アメリカ・イギリス・中国・オーストラリアで学校教育に取り入れられているほど。教育版『マインクラフトエデュ』は隠れたヒットタイトルとなっています。2012年から国連ハビタットが行う「ブロック・バイ・ブロック」プロジェクトでは、都市計画に利用されるまでになりました。

なぜ北欧なのか。「社会保障が手厚く開発者が独立しやすい」「80年代から続くコンピュータアート(メガデモ)文化の影響」「IT業界の巨人ノキアの影響」など、さまざまな分析がなされています。もっとも、ハッキリしたことは(こと日本では)誰もわかりません。なにしろヨーロッパのゲーム事情そのものが、ついこの間まで、ほとんど紹介されてこなかったのですから。

ライター情報

小野憲史

主夫ときどきゲームジャーナリスト。趣味でNPO法人IGDA日本代表

URL:Twitter:@kono3478

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