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衝撃! ペペロンチーノにオリーブオイルを使うのはNGか

2014年7月31日 09時00分

ライター情報:辻本力

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『男のパスタ道』土屋 敦著/日経プレミアシリーズ。

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今回紹介する『男のパスタ道』は、「スパゲッティ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」、通称「ペペロンチーノ」について書かれた、ちょっと風変わりな本である。

ペペロンチーノは、にんにくと赤唐辛子をオリーブオイルで熱し、茹でたパスタを絡めただけの、ごくシンプルな料理。パスタの基本中の基本と言っていいだろう。普通、パスタのレシピ本といえば、オイル系、トマトソース系、クリームソース系、ミートソース系、冷製……などと、さまざまなバリエーションを紹介するものがほとんどだと思う。しかし本書の著書・土屋敦は、それとは真逆のベクトルに突っ走る。そうして完成したのが「たったひとつの料理に14万字を費やした世界一長いレシピ本」――つまり本書は、まるまる1冊、ペペロンチーノについて「だけ」書かれた、じつに偏執狂的なレシピ本なのである。

ぺペロンチーノは、チーズやアンチョビといった、パスタ料理によく使われる旨みやコクを出す食材を一切使わない。「書斎派パスタ求道者」を自称する土屋は、ぺペロンチーノを「食材を最低限にしぼり込んだうえで、味をどこまで極めていくか。いわば『引き算』の料理」と定義付ける。求道者にふさわしく、ひじょうにストイックな料理だと言える。しかし一方で、どこででも簡単に手に入る食材を使って、安価に、短時間で調理できるため、初心者にもハードルが低く、パスタの入門編という側面もある。

なんにせよ、材料もごくわずか、作る行程も数行で説明できる料理で1冊もつのか?という疑念が生じるかもしれない。しかし、それは杞憂である。通読して分かるのは、読み物としての体裁を整えるために「新書1冊にまとめた」のが本書であり、実際にはこれを遥かに越えるトライアルアンドエラーがあったということ。さらに、時間や紙幅の制限さえなければ、さらに延々と実験を繰り返していたに違いなく、新書1冊どころか、長編小説1冊分くらい軽くいっていたかもしれないのだ。

そんな狂った(褒め言葉)レシピ本である『男のパスタ道』のキモは、「パスタの常識」に対する土屋の宣戦布告にある。「パスタの種類」「茹で方」「にんにくと唐辛子の種類・切り方」等々、ペペロンチーノを材料・調理の行程ごとにバラし、その1つひとつを仔細に、執念深く検証していく。「最高に美味しいペペロンチーノの作り方」という“謎”に対して、数々の仮説が立てられ、幾度も実験が繰り返される――。

ライター情報

辻本力

編集者・ライター。〈生活と想像力〉をめぐる“ある種の”ライフスタイル・マガジン『生活考察』編集発行。企画立案からインタビューまで、いろいろやります。

URL:「生活考察」編集日記

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