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水木しげる漫画があったから、この世界に「自分がいてもいいかもしれない」と思えた

2015年12月1日 09時50分 ライター情報:香山哲
水木しげるさんが亡くなった。たくさん「死」や「死後のこと」について描かれた方なので、「ご冥福をお祈りします」でいいのか、ちょっと分からない。とにかく、「ありがとうございました」という気持ちだ。
妖怪はとても多い!だけど「る」で始まるやつはほとんどいない

かなり色々なものを、こんなにたくさん作って残した。未来の人にも読まていくだろう。

人間が死んでも、その人が作ったものが残ってくれて、本当にありがたい。残ってくれなかったら本当にやばい。歴史を変えた発明とか法律だけじゃなくて、漫画だってそうだ。水木漫画なんて、とくに僕はそう思う。

水木しげるは手塚治虫みたいな「漫画のスーパーエリート」って印象が薄い。戦争や貧乏で苦労しまくったイメージが強くて、絵も独特だから、なんとなく「王道じゃなくてもいいんだ」という勇気がもらえる感じがある。「本当はどうか」は別にして。

鬼太郎も悪魔くんも、スーパーヒーローって感じじゃない。薄汚れてたり、お小遣いも少ない(たぶん)。いじめられたり弱さを持った悪魔くんの仲間たちが集まる「見えない学校」も、フリースクールみたいな雰囲気を僕は感じてた。なんかそういう「僕だって!」感が良い。

そんな水木漫画のおかげで「変わった漫画」を作る道に進んだ人も多いと思う。たとえば、勧善懲悪も感動スポーツも、刺激的恋愛とかもないような漫画。そういう漫画を描く人にとっては、「世の中に多様性があって、変わった場所からでもうまくいった先生がいる」って、本当に心強い。

もちろん「鬼太郎みたいな大ヒット作品が作れる可能性が自分にも!」ってことじゃない。「変なもの」って、その存在を認めてもらえないと、ただ作ってるだけでも心が削れる。だから水木漫画みたいなのはすごく心強くて、「自分がいてもいいかもしれない」「自分の好きなものを好きなままで大丈夫だ」って思える。僕も、心の支柱のうち一本は水木漫画だ。

兵庫県の神戸市に、水木通りっていう場所があって、水木しげるの「水木」の由来だ。僕は25ぐらいの頃、その通りのアパート1つ裏、中道通りっていうところに住んでた。彼がここに住んでいたのも僕と同じ頃だった。

だから自然と、頻繁に水木しげるの人生を思い浮かべたりしていた。彼は戦争で腕を失って日本に戻って、画家を諦めたり、紙芝居や貸本で食べられなくなって漫画に至った。ままならないことばかりだけど無鉄砲なわけでもないし、彼の人生はとても参考になった。

「マイペース」という彼の有名なイメージについてもよく考えてた。

ライター情報

香山哲

漫画やゲームを制作するチーム「ドグマ出版」主催。著作に『ランチパックの本』や『香山哲のファウスト1』(文化庁メディア芸術祭推薦作品)など。

URL:Twitter:@kayamatetsu

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