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時速300キロを越えて、そのまま天国へ。須田剛一原作マンガ『暗闇ダンス』 の不穏

2016年2月2日 10時00分 ライター情報:南光裕
「暗闇ダンス」が発売された。
原作須田剛一・漫画竹谷州史のタッグが送る、霊柩車のロードムービーだ。
『暗闇ダンス 壱』竹谷州史、原作・須田 剛一/KADOKAWA/エンターブレイン

「生き急いでるだけだ 死に急いじゃいねぇよ」


主人公の航(ワタル)は「時速300キロの景色」を知りたくて、夜な夜なバイクで高速を駆ける若者。職業は葬儀屋。

仕事を終えるとライダージャケットに着替えて、仲間とインターチェンジにたむろする。
「今日は300越えたいんです」
「280以上は理性が邪魔する」
「理性…それ壊せばいきますか」
理性を突き破った航は、300キロの世界に到達。
その直後にバイクから投げ出され、3年間、病院のベッドで意識不明になってしまう。

回復した航を待っていたのは、葬儀屋の社長の熱いハグと、
「世界最高の棺を届けてほしい」という仕事だった。
そんな棺を誰が必要としているのか。
助手席に、事故の影響で見えるようになった幻覚を乗せて、霊柩車の旅が始まる。

死者を生み出す側から、弔う側へ


原作者の須田剛一は、奇抜な設定とバイオレンス描写で人気のゲームクリエイターだ。
2005年の「キラー7」は多重人格の殺し屋が主人公。
2007年の「ノーモア★ヒーローズ」は全米ナンバーワンの殺し屋を目指す青年の物語。
2012年「ロリポップチェーンソー」では、女子高生チアガールがゾンビをぶった斬る。
どれも、プレイヤーが積極的に敵を殺さないと話が進まない。場面によっては画面中が真っ赤に染まることもあった。

しかし「暗闇ダンス」の航は葬儀屋。
ゲームの殺し屋とは対照的な立場から、生と死にアプローチする。

航とバケモノがたどり着いたのは、昔から田中姓が多い地域だった。
ガイドをしてくれた田中は、舞茸鳥団子塩ラーメンを食べてコーヒーを飲むと、
「幸福で充実しすぎた」を理由に、突然銃を取り出して自分の頭を撃ち抜いた。

二人目の田中に案内された役場でも、
「客人に迷惑をかけた責任を取るため」町長の田中も自分の指を噛みちぎろうとする。

須田作品の「あの感じ」を、すべての人に


なんとか町長の自殺を止めた航だが、幻覚のバケモノに「取り調べ」を受ける。(ご丁寧にカツ丼付きで。)

バイクで300キロを出した人間が、なぜ自殺を否定するのだ、と。
航の答えは「生きている実感に飢えていた」

航は常に無表情だが、300キロを突破してバイクから放り出された瞬間だけは満面の笑みを浮かべていた。
ゲームに出てくる殺し屋たちも、人の死に触れることで生き生きとした表情を見せていた。

ゲームからマンガに舞台を変えても、主人公が殺し屋から葬儀屋になっても、作品の空気は共通している。
これまでゲーム機を持ってなかった人でも、ページをめくるだけで須田ワールドを体感することができるようになってしまったのだ。
(南 光裕)

ライター情報

南光裕

おもしろいものをみつけて、わかりやすく書きます。
いまだに電子書籍よりハードカバー。
ゲームはスマホよりも専用機。

URL:Twitter:@kohadamaguro

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