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「ポケモンGO」から『ポケットの中の野生』再読。モンスターボールで母親から自立できたのだろうか

2016年8月3日 10時00分 ライター情報:千野帽子
ポケモンGOが日本で配信されて 10日たった。
配信1日にして、町の人々の行動パターンが変わってしまった。もちろんそのなかには、飽きてやめてしまう人もいるだろうから、配信直後のインパクトはなくなっていくだろう。
けれど、それはそれだけ、人々の生活のなかに、ポケモンGOが自然に浸透していく過程なのかもしれない。

これだけ多くの人がポケモンGOにはまる条件としては、Niantic社のIngressがすでに作り上げた拡張現実(AR)プラットフォームと、スマートフォンの普及、だけではなくて、もともと他のプレイ形態で浸透していた『ポケットモンスター』のコンテンツ力も、当たり前だが重要なファクターだったはずだ。
任天堂がゲームボーイ版『ポケットモンスター赤』『ポケットモンスター緑』をリリースしてから、今年で20年になる。

最初期のポケモン論


このタイミングで、もっとも初期に出たポケモン論のひとつ、宗教学者・中沢新一の『ポケットの中の野生 ポケモンと子ども』を読み返してみた。

この本は、『赤』『緑』が発売された翌年、1997年(TVアニメ『ポケットモンスター』の放映が始まった年)に、岩波書店の《今ここに生きる子ども》というシリーズ本の1巻として、『ポケットの中の野生』の題で刊行された。
その後2004年、『赤』『緑』のゲームボーイアドバンス移植版と見なされる『ポケットモンスター ファイアレッド』『同リーフグリーン』発売と同時に、本書は「ポケモンと子ども」という副題をつけて、新潮文庫から刊行された。文庫版の解説は、ポケモンの生みの親である田尻智(株式会社ゲームフリークの代表取締役社長)。

本書が着想の源としているのは、
・〈野生の思考〉論
・〈対象a〉説
・贈与論
の3本柱だ。

野生の思考


副題に入っている〈野生〉とは、構造人類学の生みの親であるフランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009)の主著『野生の思考』(1962。大橋保夫訳、みすず書房)からとられている。

野生の思考とは、人類が、生息する環境において、自然界の個々の対象を、記号として処理する思考、といえよう。
目の前のものごとどうしの間に、どのような関係があるかを考えたうえで、それによく似た関係を持つべつのものごと群との類推から、目の前のものごとを意味づけして、理解可能な形に再構成・構造化する。これが野生の思考のはたらきだ。

古代人が生み出した神話、近代化されない社会における信念のシステム(近代人なら「迷信」と呼んで片づけてしまいそうなもの)、占星術や錬金術、そして近代科学も、スタート時点ではこの野生の思考を原動力としていた。

ライター情報

千野帽子

文筆家。著書『読まず嫌い。』(角川書店)『文藝ガーリッシュ』(河出書房新社)『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)など。公開句会「東京マッハ」司会。

URL:Twitter:@chinoboshka

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