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解説します「昭和元禄落語心中」はベストオブ落語入門だ

2016年1月12日 09時20分

ライター情報:杉江松恋

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質問。落語家が座布団の上に正座して話すのはなぜですか。
下半身を省略するためです。こうすることによって座ったままの状態で、立った人、走っている人、あるいは空中に宙吊りになっている人、何でも演じることができます。

質問。どうして着物で落語をやるんですか。
役柄に即した特定の衣裳を使用しないことで、さまざまな役柄を違和感なく演じわけられるようにするためです。
『昭和元禄落語心中』雲田はるこ/ITANコミックス

なるほど。あ、これ言ったのは私ではなく、新進気鋭の落語家・立川吉笑の新刊『現在落語論』からの引用です。おもしろいのでぜひ読んでね。

言われてみればもっともだが、知らないと頭の上に疑問符が浮かび続けてしまうのが「落語」という芸である。だから聴いたことがない人は、落語会に誘われても躊躇してしまう。初心者向けにいろいろなガイドブックが出ているが、何冊本を読むよりもその世界に飛び込みやすくさせてくれる番組が始まった。TVアニメ「昭和元禄落語心中」だ。
原作は講談社「ITAN」で連載中の漫画、雲田はるこ『昭和元禄落語心中』である。コミックは現在8巻まで(今だけkindle版1巻が無料)、9巻がアニメ放送中の2月5日に発売される。あの「ダ・ヴィンチ」が今月号の巻頭特集で取り上げたほど、現在話題にもなっている。

昭和の時代を舞台とした物語である。主人公の強次(故・3代目古今亭志ん朝の本名だ)は、とある事情から刑務所に入った元チンピラだった。彼は刑務所に慰問に来た8代目有楽亭八雲に憧れ、満期出所後にその門下に入る。弟子を取らないことで有名な落語家だったか、どうした気まぐれか受け入れてくれたのだ。八雲宅には彼の旧友である故・有楽亭助六の遺児・小夏がいた。有楽亭与太郎の名を貰った強次は、姉さん格の小夏からも教えを受けつつ前座の落語家として働き始める。
この与太郎となった強次が、あることで八雲の不興を買い、破門されかける。そこで食い下がってなんとか首の皮一枚でつながって、というところまでが『昭和元禄落語心中』の序盤〈与太郎放浪篇〉である。アニメ第1回もここで終わる。八雲は与太郎に師弟としての3つの約束を誓わせ、ここで初めて題名にある「心中」の語に深い意味があることがわかってくる。そこから八雲が自分と親友だった助六との因縁を語る〈八雲と助六篇〉が始まるのだ。時計の針は戻り、八雲と助六がまだ10代だった戦前の時代へと遡る。1月15日に放送されるアニメ第2話はこの〈八雲と助六篇〉の発端なので、第1話をまだ観ていない人もまだまだ追いつける。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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