不振のジョコビッチを「テニス世界王者」に変えた驚異の食事メニ...の画像はこちら >>


鉄人アスリートはどのように作られるのか。医学博士・古川健司氏が、テニス界の最強王者ノバク・ジョコビッチを例に、食事と肉体の関係を解説する。





プロテニスの世界最強王者である、ノバク・ジョコビッチ。



かつてジョコビッチは、有力なプレイヤーではありましたが、スタミナがなく故障離脱の多い、本人が認める通り「第二集団のなかでもがくだけの」存在でした。



たびたび頭の重さを訴え、試合ではスタミナロスも露呈しています。そのためいつもフェデラーやナダルの後塵を拝し、フェデラーにはこうも言われました。



「あいつはマンガみたいなものだよ。あんなに怪我ばっかりして」



ところが、2010年1月の全豪オープンで胃の不調によって敗退してから、1年半後、ジョコビッチはすっかり別人に生まれ変わっていました。



2011年の4大大会で3冠達成、マスターズでは5タイトルを獲得し、自身初の世界1位にランクされたのです。



以後、ジョコビッチが名実共に世界のトップに君臨し、今日に至っているのは周知の通りです。



ジョコビッチを「鉄人」に変えたのは食事でした。



2010年、グルテン(小麦)と乳製品に対してアレルギー反応を起こすことが分かったのが、そのきっかけです。



それからというもの、ジョコビッチは小麦粉を一切摂らないグルテンフリーに切り替えると、さらに余分な糖分と乳製品を計画的に排除するなど、アスリートに必要な栄養学的なアプローチを徹底するようになります。



その結果、ジョコビッチの肉体は以前に比べて引き締まり、驚異の持久力を持つ体に変わったのです。



ジョコビッチが採用した食事は、私がすすめる「ケトン食」と同じものです。「ケトン食」では、炭水化物を極端にカットする代わりに、健常者の約2倍のタンパク質を摂取するようにしています。



具体的には、ごはん、うどん、パン、パスタなど主食となる炭水化物は、一日3食すべてでNG。かわりに、良質なタンパク質と脂質をメインにした食事に切り替えます。



タンパク質を豊富に含んだ食べ物には、魚介類や肉、大豆、卵などがあります。タンパク質が豊富でも、炭水化物も豊富に含まれている食べ物は、基本的にNGです。



青魚など魚介類の刺身は積極的に摂取する必要があります。



肉は、飽和脂肪酸の少ない鶏肉(皮はNG)や牛・豚のヒレ、モモ肉を選び、脂身の部分をできるだけカットして食べます。



鶏肉に関しては、羽を動かす胸肉を推奨しています。なかでも、何万キロも休みなく飛び続ける渡り鳥の胸肉には、イミダゾールジペプチドという抗疲労成分が豊富に含まれており、これが驚異のスタミナの源泉になっています。



ーー古川氏の近著『ケトン食ががんを消す』(光文社新書)より



●古川 健司(ふるかわけんじ)



医学博士。1967年山口県生まれ。

92年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒。その後、山梨医科大学医学部医学科に入学。99年、消化器外科医を志望し、東京女子医科大学消化器外科に入局。大学では、膵臓班に所属し、当時、膵臓がん手術件数日本一を誇っていた。2006年、(公財)東京都保健医療公社荏原病院外科を経て、多摩南部地域病院外科に勤務。NST(栄養サポートチーム)に従事し、本格的にがんの栄養療法を開始。
がん免疫栄養療法の臨床実績を上げて、14年、それまでの栄養療法のケトジェニック化に成功。15年1月より、ステージ4のがん患者を対象に、世界初の臨床研究を開始。現在、がん免疫栄養ケトン食療法の普及に努めている。