◆会社設立の舞台裏描く
夏葉社。
著者の島田潤一郎さんがひとりでやっている出版社だ。
名もない小さな出版社の最初の本として、すこぶる贅沢(ぜいたく)だ。ただ、私が最初に買ったのはこの本ではなく、2冊目の、関口良雄『昔日の客』という本だった。ツイッター経由で知った。
それからポツリポツリと島田さんは本を作ってきた。派手な話題になる本ではけっしてない。だが、作り手の視線を感じさせる本だ。
たったひとりで出版社をやってこれだけ面白い本が作れるのだから、趣味のいい、生活に困窮していない人なのだろうと想像していた。
まるで違った。30歳まで挫折の連続だった。大切な従兄をなくした。彼と彼の両親のために、島田さんは出したい本があった。そのために出版社を興したのだった。
心揺さぶられる文章。島田潤一郎と夏葉社、要注目。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2014年7月23日
【書誌情報】
あしたから出版社著者:島田 潤一郎
出版社:筑摩書房
装丁:文庫(336ページ)
発売日:2022-06-13
ISBN-10:448043822X
ISBN-13:978-4480438225