◆小説への心意気感じる作品
今年の文藝賞受賞作。著者も言うとおり、公園は不思議な場所だ。
でも、小説は公園の不可解さにこだわるわけではない。主人公はほとんど無目的に動き回る。伊豆に、ニューヨークに、だらだらと移動するけれど、彼の姿はあたかも、公園で日向(ひなた)ぼっこする人のようだ。そこに明確な志向性はない。つまり、どこに行っても、歩き回っても、そこは「公園」というわけだ。
もちろんそんな理の勝った解釈で出来ている小説ではない。ヤクザになぜか同行したり、ニューヨークに旅行してやっとわかったことは、チベットに行きたいということだったり、など。
一つひとつのエピソードにはどこか軽妙なユーモアが漂う。それはこの作者の才気ではなくて、小説を書くうえでの決意とか、覚悟とか、そんな基本的な構えにかかわっているような気がする。
つまり、勢いに任せて小説を書いているようでいて、結構したたかに小説をコントロールしようとする意思が感じられるということだ。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2006年12月6日
【書誌情報】
公園著者:荻世 いをら
出版社:河出書房新社
装丁:単行本(148ページ)
発売日:2006-11-17
ISBN-10:4309017894
ISBN-13:978-4309017891