『冬の旅 Wintertime Voyage』(河出書房新社)著者:桜井 鈴茂Amazon |honto |その他の書店

◆最後のフリーター小説
昔、フリーターという言葉もなかったころ、大学を出て、自由を求めて仕事に就かない人がいた。そんな時期があった。
90年代のことだ。日本にも経済的な余裕があった。アルバイトをしながら、自分のやりたいことをやるために、夢を追いかける――なんて、ことを恥ずかしくなく話せる時代があったのだ。

そうした社会背景から滲(にじ)み出たような小説もあった。「フリーター小説」と呼ばれた。時代の気分を切り取った小説だった。具体的には鈴木清剛や岡崎祥久、一時期の角田光代もそうしたジャンルに入るような小説を書いていた。

桜井鈴茂は、「フリーター小説」を一過性のものとはみていない。フリーター小説の「その後」を真剣に考え続けてきた作家だ。そのことがこの小説を読むとよくわかる。

東京郊外の町で「例の惨殺事件」が起こり、コンビニの同僚が失踪し、公園では爆弾が見つかった年。突然、楢崎が「おれ」の前に現れ、「ロックン・ロールをまっとうするしかない」と言い放つ。


どうする、おれ。40代フリーターが人生を賭けた戦いに打って出る。最後のフリーター小説、完結。

【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。

【初出メディア】
日本経済新聞 2011年2月2日

【書誌情報】
冬の旅 Wintertime Voyage著者:桜井 鈴茂
出版社:河出書房新社
装丁:単行本(164ページ)
発売日:2011-01-15
ISBN-10:430902016X
ISBN-13:978-4309020167
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