社会に出て、「もっと勉強ができれば」「もっと賢かったら」と歯がゆい思いをしたことはないだろうか。我が子にはなるべくそんな思いをしてほしくないと、子どもの教育に力を入れている親は多い。

しかし、具体的にどのような働きかけをすれば、子どもの能力を伸ばせるのだろうか。

 今回紹介する『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)は、タイトルからもわかる通り、子どもの才能や能力を伸ばすための方法を紹介する1冊だ。ここでは、具体的な例をいくつか見てみよう。

 我が子を賢く育てたいと思ったときにまず参考にするのは、難関大学の学生のような実際に「伸びた子」が、幼少期にどんなことをしていたかということではないだろうか。著者である脳医学者の瀧 靖之氏も、そこに着目。本書によると、「伸びる子」と「伸びない子」の違いについて調査を始め、「伸びる子」に見られるある共通点に気がついたという。

「それは、『成績が伸びていった子は、幼い頃から図鑑が大好きで、よく見ていた』ということです。
見ていた図鑑の内容は、花、植物、動物、鳥、昆虫、乗り物、宇宙......と人それぞれでした。しかし、多くの学生たちは、字が読めるか読めないかくらいの時期から図鑑が家にあったと言います」(本書より)

 しかし、ただ図鑑を買い与えるだけでは子どもの成績は伸びない。子どもの能力を伸ばすには、図鑑をうまく利用して「親が子どもの好奇心を伸ばす」という役割を果たす必要がある。例えば、乗り物図鑑で子どもが電車に興味を持ったら、実物を見に駅まで連れていく。公園で花を見つけたら、図鑑でその花を探してみる。

図鑑で得る「バーチャルな知識」と、現実世界の「リアルな体験」とを、親が結びつけてあげることが重要だ。

 ここで、なぜ子どもの学びに好奇心が大切なのかを考えてみよう。好奇心はテストの得点には直接影響しないが、勉強を苦痛に感じにくい子どもを育むうえで重要な役割を果たしてくれる。

 学力の向上には授業を受けたり、机に向かって勉強をする必要がある。しかし、多くの人が勉強は楽しくないと考え、できるだけ机から逃げようとした経験があるはずだ。

 好奇心は、知らないことを知る「勉強」という作業を楽しいものへと変えてくれる。また、好奇心が高まっているときには記憶が促進されることを示した研究もある。勉強を頑張らせる前に好奇心を育む手助けをして、我が子が進んで勉強できる土壌を整えたほうがいいだろう。

 親ができる、子どもの才能を伸ばすための手助けといえば、「習い事」の存在を忘れてはいけない。「どんな習い事をさせたらいいか」という質問をよく受けるという著者は、おすすめの習い事について以下のように記している。

「最初の習い事は3歳くらいからでしょうか。その頃の習い事としては、ピアノをはじめとする楽器がおすすめです。


その時期は特に音感やリズム感が身につきやすい、ということもありますが、楽器はそれ以上のパワーを秘めています」(本書より)

 3、4歳は言葉が発達する時期と重なるため、このときに楽器に触れることで、言葉の領域にもよい刺激があると考えられている。著者は、音楽を利用して脳に言葉を受け入れる準備をさせておくことは、子どもにストレスのかからないよい方法だと述べている。また、音楽は将来的に外国語を習得したいときにも役立つのではないかと著者は言う。

「"L"と"R"、"B"と"V"などの発音の違いを聞き取る『耳の力』は、第二言語として英語を習得する上では必須です。その基礎を、幼い頃の音楽教育によって身につけておくことは、後のスムーズな英語習得につながります」(本書より)

 最後に、脳の働きを左右する条件についても触れておこう。著者いわく、頭がいい子は脳のコンディションをよりよく保つような生活習慣をしていることが多いという。例えば、睡眠だ。

「十分な睡眠時間をとっている子供は、慢性的に寝不足な子供よりも、海馬の体積が大きく、基本的な記憶力も優れている、ということが、脳画像の解析から判明しつつあるのです」(本書より)

 いくら図鑑や習い事で子どもの好奇心を刺激し、成長を促しても、脳のコンディションが整っていないと意味がない。子どもを賢くしたいからといって、長時間無理をさせるのは厳禁。健康的な生活を心がけ、子どもの心身の健やかな成長を最優先することが大切だ。

 親の関わり方は、子どもの成長を支える大切な要素の一つとなる。本書は、子どもの能力や好奇心を伸ばすための具体的な方法を知りたい人に読んでほしい1冊だ。

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