義父母との関係は「縁のある他人」と割り切って、いい距離を探る女性は多い。昔のように「嫁だから」と我慢するのがいいことではないと分かっているからだ。
だが、義父母がそれを分かってくれるとは限らない。中には、義両親がいい人過ぎてつらい、というケースもあるだろう。

■娘ができたようでうれしいと言われて
結婚して8年たつミドリさん(40歳)。7歳の息子と5歳の娘がいる。同い年の夫と共働きで頑張ってきたのだが、2年前、夫の勤務先が同業他社と合併、夫の立場が微妙になった。

「夫は今までとは違って居づらい、辞めたいと言っていましたが、子どももいることだし転職しても給料は低くなるだけ。もうちょっと頑張ろうよと励ましていたんです」

だが夫のメンタルは危うかった。そこで「うちに越してきたら?」と助け船を出してくれたのが義母だった。もともと夫の実家近くに住んでいたので、夫婦ともどうしても忙しくて保育園の迎えに行けないときは義母に頼んでいた。

「私はあまり頼りたくなかったので、定時で帰って子どもを迎えに行くことも多々ありました。新型コロナの影響があったときは仕事を持ち帰りやすかったし。義母はいい人だし、『たまには頼って。
一人で頑張り過ぎちゃダメよ』と言ってくれるのはありがたかったんですが、結婚するとき『私に娘ができたのね、うれしい』とボロボロ泣いたんですよ。いや、娘じゃないしと私は心の中で思っていた。違和感があったんです。それなのに甘えたら、義母はもっと私を『娘扱い』する。それは避けたかった」

■夫の休職で覚悟を決めることに
夫には兄がいるのだが、転勤族のためなかなか親の近くには住めない。もともと義母は次男である夫の方がかわいかったのか、「あなたの奥さんは、私にとってもかわいい娘」などと公然と言ってしまうタイプなのだ。歓迎してくれているのは分かるが、ミドリさんは三人姉妹の真ん中、親には自立を促されながら淡々と育てられたため、べったりと濃厚な愛情表現が苦手だった。

結局、夫は休職することになった。収入が減るなと思っていたら、義母が「うちの敷地に小さい家があるから」と言ってくれたのだ。数年前まで義父の弟一家が住んでいたため、まだきれいだし、夫も心強いだろう。休職が退職になる可能性もあるのだからとミドリさんは覚悟を決めた。

義父母は全て了解し、「子どもたちはうちで食事をしていいから」と言ってくれたが、ミドリさんはそれは丁寧に断った。
あくまで家庭は別ですから、と。

「じゃあ、私にできることは何でも言って。あなたは娘なんだから。私の家族なんだからと義母は強調していましたが、私にはやはり違和感がありましたね。ただ、気持ちはありがたかったから素直にお礼を言いました」

■何も言わずに出入りする義母
義母は毎日、夕飯のおかずを届けてくれるようになった。ミドリさんが子どもたちと「今日はハンバーグね」と約束していても、大きな丼に煮物や酢の物を持ってきてしまう。もったいないから食べるしかない。

「明日は準備していくので大丈夫ですからと言っても置いていくんです。娘などは『ハンバーグが食べたい』と泣いてしまったので、こっそりハンバーグを作り、義母の用意したおかずは私のお弁当のおかずにしたこともあります。夫はほとんど母屋にいるので、それもなんだかモヤモヤしましたね」

そしていつしか、義母はミドリさんたちのいる家に上がり込むようになったらしい。ミドリさんのアクセサリーがいつもと違う引き出しにあったことから、おかしいなと思うようになった。アクセサリーだけではなくスカーフやバッグ、ときにはワンピースがなかったこともあった。


「夫に言ったら、『おふくろがたまに借りてるみたいだな』って。それは嫌だ、阻止してよと言ったんですが、夫はそういうことに巻き込まれたくないと」

1年たって夫は職場に復帰したが、実家が敷地内にあるという安心感からか、遅くまで飲んで帰ることも増えた。夫自身は「これも付き合いだよ。合併後の職場になじんでいないから、取り返さないと」ということだった。

■早退して自宅に戻ったら
つい先日、ミドリさんは出社したものの急に体調が悪くなり早退した。自宅の門の前で母屋から出てきた義母とばったり会ったのだが、義母はミドリさんの洋服を着ていた。

「あっと私が言ったら、『ごめんね。ちょっとだけ貸して。クリーニングして返すから』って。そういうことじゃないんです、私のものを勝手に着ないでくださいと、調子が悪いこともあって怒鳴りつけてしまいました。義母は顔色を変えて、『母と娘なんだから、貸してくれたっていいじゃない』とつぶやいた。でも私は『母と娘じゃありません。
あくまで私はあなたの息子の妻というだけの関係です』と言っちゃったんです」

その日は寝込んでしまったミドリさんだが、翌日の夜、クリーニングから帰ってきたワンピースが玄関に置いてあった。それきり義母とは顔を合わせていない。さすがに夫が「どうしたの。おふくろもなんだかおかしいんだよ」と言ったが、ミドリさんは説明しなかった。

「もう嫌だというのが本音です。ここを出てまたどこか借りようと夫に言ったんですが、家賃がかからないだけでありがたいじゃないかと」

今、ミドリさんの頭には時々「離婚」の文字が浮かぶ。一度、ゆっくり夫とも話し合わなければ先に進めないと考えているそうだ。
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