リカバリーバブルが到来している。専用ウェアにグッズ、メソッドが盛りだくさんで、「休養本」はバカ売れ中。
なぜ疲労回復を求める現代人は増え続けているのか? ブームの真相と効果的リカバリー法を探った。

超短時間睡眠で補うしかない

「9時~翌5時」の20時間勤務…元ゴールドマン・サックス社員...の画像はこちら >>
モーレツ・サラリーマンたちが実践してきた疲労回復法を取り上げたい。

「先輩にたびたび言われたのはマイクロスリープの必要性。5分だけ深い眠りに就いてリフレッシュする方法です」

こう話すのは、ゴールドマン・サックス(GS)の中でも特に仕事がハードとされる投資銀行部門に7年勤めた田所雄二さん(仮名・40代)だ。

「仕事は“9時~翌5時”の20時間勤務。M&Aを担当していたので、日中は日本のお客さんへの買収・売却提案やミーティングで埋まり、夕方からはロンドンの顧客、夜11時ぐらいからアメリカの顧客とのミーティングが入る。

深夜に翌日の提案書などを作って上司にチェックしてもらうのですが、必ずダメ出しを食らうので朝5時まで仕事が終わらない。おのずと睡眠負債が溜まるので、超短時間睡眠で補うほかないんです。ランチ時は10以上ある個室トイレが全部埋まっていました。みんなトイレで5~10分寝るので」

それで疲れが取れるはずもないため、多くの社員は体力の底上げに取り組むという。

“超人”化するGS社員たち

「最初はサプリを使ったり、サラダしか食べなくなるなど健康食に走るヤツが多いんですけど、次第にジムで体を鍛えるようになる。基礎体力を底上げして、疲れに負けない体をつくり上げるほうがパフォーマンスが上がるので。

六本木ヒルズに本社があったときは社内にGS社員専用のコナミスポーツのジムが併設されていたので、そこで仕事の合間にトレーニングに励み、テストステロンを分泌させてやる気と集中力をみなぎらせる。それが習慣化すると、長時間労働も苦にならなくなる」

そのため、“超人”化するGS社員が多いとか。


「私はGSを離れて起業しましたが、仕事が緩すぎるので、自分の会社以外に3社のアドバイザーを務めながら、大学での学び直し、週3日は空手の道場に通い、予備自衛官にもなりました。

その自衛官には暑熱順化訓練といって、夏場に厚着をしてジョギングするなどして暑さに慣れる訓練があるのですが、これはGS時代にやった基礎大量UPトレーニングと一緒。体に負荷をかけ続けて限界値を引き上げる。これを続ければ、人間誰でも疲れに負けない体をつくり上げることができます!」

取り調べの疲労を解消した筋トレと枕

「9時~翌5時」の20時間勤務…元ゴールドマン・サックス社員が実践していた「トイレで5~10分睡眠」壮絶すぎる疲労回復法
現在は全長21mの大型トレーラーのドライバーを務めるヨシトさん、最近はカップ麺にササミと黒ニンニクを投入して栄養補給するとか
一方で「ニンニクと快眠グッズで乗り切った」と話すのは、5年前まで8年間、長距離トラックドライバーとして働いた経験を持つヨシトさん(31歳)だ。

「当時は一日12~16時間労働で、30kgある荷物を1000個も手作業で積んだり、荷下ろしするのもザラでした。毎日、疲労は極限状態に達するので、とにかく睡眠時間を確保することに努めました。2日に一度しか家に帰れないのですが、シャワーを浴びる時間がもったいないので、汗拭きシートで済ませて1分でも長く寝る。

快適な睡眠のために、2万円以上する高級枕をトラックに常備し、ホットアイマスクとリカバリーウェアを身につけて寝ていました。食事は買いだめしておいたレトルト食品をトラックに設置したレンジでチン。もしくはカップラーメン。外で食事するより、お金も時間も節約できるからです。そこに、常備しておいた生のニンニクをスライスして振りかけると、エネルギーがチャージできる。疲れは抜けないけど、長時間労働は乗り切れる」

ハードすぎる試練を乗り切った人

“仕事”とは異なるが、ハードすぎる試練を乗り切った人も紹介しよう。東大大学院の共同研究を巡る汚職事件で5月に贈賄の疑いで有罪判決を受けた日本化粧品協会元代表理事の引地功一氏(52歳)だ。


「’24~’25年は仕事をしながら週3回は警視庁で毎回8時間ほどの取り調べを受けていましたが、’26年1月から検察官による取り調べを受けるようになって、ほぼ仕事ができない状況になりました。昼11時に検察庁に出向いて19時まで取り調べを受けたあとに、20時から24時まで警察の取り調べが入ったりするんです。ご飯を食べる時間もくれないので、一日1食の生活。

ストレスと疲れで、『こんな生活が続くなら、もう首つります』と取調官に漏らしたこともある。それで、自律神経だけは整えようと、どんなに疲れていても5kmのランニングと、腕立て・腹筋・背筋を50回ずつやるようになったんです」

さらに、“安眠枕”が引地氏の疲れを癒したという。

「難消化性デキストリンという水溶性食物繊維を常備し、コーヒーに入れたりしながら飲んでました。これによって腸内環境の乱れが改善されて、間接的に疲労感を和らげる効果が得られた。あとは、ホテル暮らしが続いていたので、ニトリで高さが調節できる枕を買ったら、ぐっすり7時間寝られるようになった。ニトリの枕は、もはや戦友です!」

あまり参考にはならないが……「筋肉は裏切らない」ことだけは本当のようだ。

「9時~翌5時」の20時間勤務…元ゴールドマン・サックス社員が実践していた「トイレで5~10分睡眠」壮絶すぎる疲労回復法
引地氏は1年以上も週3日・8時間程度のハードな取り調べを受け続けて、体重減、精神の不調も来したという


一流ビジネスマンに学ぶリカバリー法

「9時~翌5時」の20時間勤務…元ゴールドマン・サックス社員が実践していた「トイレで5~10分睡眠」壮絶すぎる疲労回復法
クロスリバー代表取締役の越川慎司氏
一流のビジネスマンは、どうリカバリーしているのか? それを知るのは元マイクロソフト業務執行役員で世界のエグゼクティブに精通する越川慎司氏だ。7月には新刊『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』を上梓した。

「まず、彼らはワークライフバランスなんて考えていません。アマゾンのジェフ・ベゾスが『ワークライフハーモニー』と表現しているように、仕事と人生はバランスを取るものではなく、調和させるものという考え方です。
そのために彼らが徹底しているのは『デイクロージング』。その日に判明した課題は、その日のうちに解決する、ないしは翌日に取るべき対応策を決める。

しっかり、一日を“閉じる”から『明日はどうしよう』とモヤモヤせず、気持ちよく寝られて仕事の疲れが残らない。オン・オフの切り替えを徹底しているので、寝室にスマホを持ちこまない一流が多い。寝るための場所では、寝ることだけを考える。だから、アナログな目覚まし時計で起きるという人が多い」

睡眠時間はゲーム感覚で確保

一流は疲れのマネジメントも徹底しているという。

「彼らは肉体的、心理的、頭と、疲労を3つに分類してリカバリー法を考えています。肉体的疲労は早朝の運動習慣や7時間以上の睡眠時間などでカバーし、心理的疲労と頭の疲労はデイクロージングによって確保した家族との時間や休日のアクティビティなどで解消する。重要なのは、あらゆることに積極的に取り組む姿勢。

ビル・ゲイツがジャンクフードを好み、ゲームに没頭してリフレッシュするのは有名な話ですが、彼らは“積極的にダラダラと過ごす”。自らの決断でゲームというタスクを実行するので、ダラダラしているように見える行動でも、彼らは達成感を覚えている。一流は積極的に余白をつくるのが上手とも言えます」

では、我々が一流に近づく方法はあるのか……?

「自分に合う休み方を知って、仕事と生活の調和を取ること。
まずは週に1回、21~22時頃に就寝して7時間の睡眠を取ることに挑戦してみるといいでしょう。一流に倣って、寝る1時間前にお風呂に入り、スマホを持たずに入眠する。そんな実験をしながら、仕事のパフォーマンスが上がる習慣とリカバリー法を探す。新しい趣味に挑戦したり、起床後5分のデジタルデトックスもいい。ゲーム感覚で自分にタスクを課してみましょう」

まずは、休み方から一流に近づくべし!

【クロスリバー代表取締役 越川慎司氏】
マイクロソフト業務執行役員を経て独立。世界各地のメンバーと800社以上の働き方改革を支援。近著『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』が発売中
「9時~翌5時」の20時間勤務…元ゴールドマン・サックス社員が実践していた「トイレで5~10分睡眠」壮絶すぎる疲労回復法
[疲労回復ブーム]の真実
※2026年8月19日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[疲労回復ブーム]の真実]―
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