ボーナスの半分は「奥さん」に出しなさい。日本マクドナルド創業...の画像はこちら >>



「ボーナスの半分は奥さんに出すべきだ」日本マクドナルドを創業し、30年にわたり社長としてトップの座を守った藤田田は『殺されない社長の心得』(ベストセラーズ)の中でそう主張する。賞与の支給すらケチる経営者や、あくせく働く夫社員からすれば恐るべき提言だが…そこには稀代のリーダーの巧みな人心掌握術が詰まっていた!





■社員のために金を惜しむな



 日本マクドナルドでは、社員のために、毎年1000万円の金を捨てている。

といっても、なにも溝に捨てているのではない。



 社員とその家族に万一のことがあったときにそなえて、東京の荻窪の衛生病院と大阪の警察病院に合計1000万円を払って、ベッドを確保しているのだ。



 社員とその家族に、もしものことがあっても、ただちに手術ができる態勢を整えている。



 だから、日曜日に倒れて、病院をタライまわしにされているうちに死ぬような不安は、わが社の社員に関してはない。



 昨年も一昨年も、社員で倒れてかつぎこまれたものはいない。だから、年間1000万円、4年間で4000万円を丸損している計算だが、そのために社員が安心して働けるのであれば、結局は会社にとってもプラスになる。



 全社員とその家族には、いつでもこのベッドが使えるように、カードを渡してある。



 そうやって社員の万一にそなえている会社は、日本にも、まだたくさんはない。



 社員のために金を捨てることを惜しんではならない。





■社員の奥さんの心をつかめ



 私は、社員の奥さんの誕生日には、花屋から花束を届けさせることにしている。



 花束といっても、何万円もする高価なものではない。



 それでも、奥さん方からは、とても喜んでもらっている。



 「主人が忘れている私の誕生日を社長さんに覚えていただいて、感謝しています」



 そんな内容の礼状を、何通も受け取った。



 日本マクドナルドでは、盆と暮れのボーナスのほかに、3月にもボーナスを出している。これを〝決算ボーナス〟といっているが、この決算ボーナスは社員にではなく、社員の奥さんに渡すことにしている。独身者は本人に渡すが、妻帯者は奥さんに渡す。



 そのために、社員は決算ボーナスを〝奥様ボーナス〟と呼んでいる。奥さん名義の口座を会社に登録してもらっておいて、そこにボーナスを振り込む。



 なぜ、社員の奥さんにボーナスを出すかというと、内助の功を金銭的に認めてあげたいと思うからである。



 ボーナスを奥さんの口座に振り込んでから、奥さんには手紙を送る。



 『会社が今日、これだけ儲かって繁盛しているのも、奥さんのおかげです。会社で働いているのはあなたのご主人ですが、その何十パーセントかは、奥さんの力によるものだと思っています。だから、このたびお送り致しましたボーナスは奥さんのものです。ご主人に渡す必要はありません』



 そういった意味の内容の手紙を出す。



 この『奥様ボーナス』も、なかなか評判がいい。



 「生まれて初めてボーナスをいただきました。ありがとうございます」



 「ほしかったメガネを買いました」



 「ボーナスで子供の服を買いました」



 そんな礼状がずいぶんくる。



 私は、日本の会社はボーナスの半分は奥さんに出すべきだ、と思っている。



 旦那が会社で十分に能力を発揮して働くことができるのは、家を奥さんが守っているからである。したがって、奥さんもボーナスを取る権利がある。



 欧米諸国では、夫婦は一体で、どこへ出かけるにしても一緒である。夫婦が社会の核になっている。ところが、日本では、主人だけが核になっている。奥さんと子供はつけたしでしかない。これではいけないと思う。



 奥さんだって、社会の核だ、50パーセントなんだ、ということを、もっと意識づけなければならない。



 私は、毎年1回パーティを一流のホテルで開き、社員を夫婦同伴で招くことにしている。その席で、かならず、私は奥さんにたのむことにしている。



 「奥さん、旦那さんたちは実によくやっています。私から奥さんにお願いしたいことはひとつしかありません。ご主人の健康管理です。私はご主人を世界の一流ビジネスマンに育てていくつもりです。しかし、ご主人の健康管理までは手が届きません。ですから、健康管理だけはよろしくお願いします」



 そうたのむのだ。



 社員の奥さんたちは、そういうと、張り切る。



 主人と私は一体なのだ、という気持ちで、張り切って、やります、といってくれる。



 日本人は口では偉そうに「夫婦は一体」などと一体感を強調するが、実行はしない。私はそれを実行している。



 夫婦が社会の単位である、と考えているから、社員の奥さんを社員同様に大切にする。



 社員にしても、自分の女房を大切にしてもらえば、悪い気がするはずはない。



 日本の会社は、旦那ばかり温泉に連れて行って、芸者をあげて騒いでいる。ところが、マクドナルドは1年に1回、私たち女房を呼んでパーティをやってくれる。じつに素晴らしい。



 奥さんたちは、そういって喜んでくれる。





■誕生日は公休日にしてやれ



 私は、社員の誕生日はその人の公休日にしている。つまり、社員は、自分の誕生日には、会社に気がねをすることなく、堂々と休んで、家族と誕生祝いができるのである。



 誕生日は社員にとって、自分の祭日であり、安息日でもある。



 そうやって、自分の誕生日を家族と心ゆくまで祝って、英気を養い、翌日からの新しい戦いに備えてもらいたいと思う。



 また、私は正月には全社員にお年玉を出す。



 元日に顔を合わせて「新年おめでとう」といっても、ただ「おめでとう」というのでは意味がない。



 お年玉が出る。少額ではあっても、お年玉が出ると、新年になって、おめでたいなァ、という実感がわく。



 心から「新年おめでとう」といい、新しい気持ちで一年を働くはずみをつける役に立てば、と思って、私はお年玉を出す。



 ほかにも5月5日の端午の節句には、男子社員にお祝い金を出す。



 男子社員にだけ出してはまずいので、3月3日の桃の節句には、女子社員と社員の奥さんに、お祝い金を出す。



 そうやって、私は会社の人の和を大切にしていっている。



 そして、私は、社員の奥さんの誕生日には花束を贈るが、社員の誕生日には、5000円をプレゼントすることにしている。



 子供のいる社員には、桃の節句には女の子を持っている者に5000円、男の子のいる社員には端午の節句に5000円をプレゼントしている。



 あまりほしくない品物をもらうよりは、5000円のほうを人間は喜ぶものだ。私は同じ値段の品物ならば、5000円の現金のほうが価値がある、と思う。



 品物には使い道はないが、5000円はどんな使い方でもできる。そこに、5000円の現金の価値がある。



 奥さんの誕生日に花束を贈り、社員の誕生日や節句に5000円をプレゼントすると、浪花節だという人がいる。



 私は浪花節でくすぐることも、日本人がそれを期待しているのだから、やるべきだと思う。私のことをみんなは、あの社長はガリガリの合理主義者だ、と思っている。そこで、私は、まるで正反対の浪花節でいくのだ。



 浪花節は日本ではもっとも効果的な人心収攬術で、藤田はそれを利用しているだけ、と悪口をいう人もいるが、相手が喜べばいい、と私は思う。





文:藤田田





《『殺されない社長の心得』より構成》

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