2026年の株式市場は上昇基調が続き、日経平均株価は6月に史上最高値を更新した。一方で7月に入ると半導体関連株が急落し、相場は大きく揺れている。


こうした先の読みにくい相場においては、リスクをどう把握し、どう向き合えばよいのか。預かり資産・運用者数ともにNo.1を誇るロボアドバイザー「ウェルスナビ」主催のウェビナーから、その答えを探る。

投資とメンタルの深い関係

2016年のサービス開始から、今年で10周年を迎えるウェルスナビ。今回のウェビナーのテーマは「データで見る『リスク』の今~分散投資とウェルスナビの10年から~」だ。データをもとに、リスクとの向き合い方や分散投資の有効性が語られた。

ウェルスナビ PRの佐藤健氏によると、株式市場は値動きの荒い展開が続いているという。7月17日には、日本株の上昇を支えてきた半導体メモリ大手の「キオクシア」が大幅下落、日経平均は歴代5番目の下げ幅を記録した。

年始からの株高で恩恵を受けている個人投資家は多いが、一方で足元の急変に恐怖を覚える人も少なくない。「こうした不確実性の高まる相場において、投資家の運用実態を冷静な視点で見ていきたい」と佐藤氏は続ける。

ウェルスナビはサービス開始当初から「長期・積立・分散」を重視し、金融庁も同時期に同様の発信を続けてきた。しかし佐藤氏は、「QUICK資産運用研究所のデータによると、投資信託保有者の平均保有期間は足元で3年ほど」と話す。ウェルスナビが長期投資の目安とする10年とはなおギャップがあり、途中で解約する人も一定数いるのが現状だ。


その要因として、「投資とメンタルとの強い関連性」を佐藤氏は指摘する。資産運用業協会の意識調査では、投資をやめた理由の上位に「資産が減った」「日々、市場動向を気にすることに疲れた」が挙がる。

ウェルスナビがNISA利用者約1,000名に実施した調査では、資産運用に伴う日々の手間に、ストレスを感じない人が6割超だった。だが、仮に1カ月で資産価値が20%下落したらと問うと数字は逆転し、6割超が不安を感じると回答した。

また、不安の対象は資産額だけでなく、選んだ金融商品や資産配分にもおよんでいる。佐藤氏によると、足元ではNISAを通じて世界株や米国株など「株式のみ」の投資信託に人気が集中しているという。

その株価がいま大きく変動しており、不安を感じる人も多い。「まずは株式の変動リスクを把握することが大切」と佐藤氏は強調する。
同じ資産でもリスクは一定ではない

続いて、同社で資産運用アルゴリズムの開発を担当する長谷川直弘氏が、投資におけるリスクについて解説した。

投資においてリスクとは、リターンの振れ幅を指す。資産価格はプラスにもマイナスにも動き、その振れ幅は資産によって大小がある。振れ幅が小さい資産はローリスク・ローリターン、大きい資産はハイリスク・ハイリターンとなる傾向がある。
「リターンばかりが注目されがちだが、その裏に下振れの可能性が潜む点は忘れてはいけない」と長谷川氏は警鐘を鳴らす。

たとえば、株と債券では振れ幅が大きく異なる。2000年以降の月次リターンの分布を見ると、世界株はプラスにもマイナスにも幅広く散らばり、月10%超の上昇も、10%超の下落もある。一方で債券は分布が中心に寄る。月5%を超える下落があった月は、債券が0カ月だったのに対し、、世界株は31カ月あった。大きなリターンが見込める半面、必要なタイミングで大きく下落するリスクも伴う。

一方で、「同じ資産クラスでも、局面によってリスク水準は異なることがある」と長谷川氏は解説する。リスクを数値化する指標に、リターンの振れ幅を示す「標準偏差」がある。人気の投資先である米国株と世界株を過去5年間の標準偏差で見ると、2017年頃が最も低く、2024年頃が最も高い。標準偏差は約2倍弱の開きがあった。同じ株式でも、いつ投資するかによってリスクの大きさは変わってくるのだ。

なお長谷川氏によると、2010年代中盤と比べて2020年代に株式のリスクが高まっている理由は、2つ考えられるという。
1つはイベント要因だ。2020年のコロナショック、2022年のインフレショック、2025年の関税ショックと、市場が下落する局面が相次いだ。

もう1つは株式市場の構造変化である。半導体銘柄やそれを含む情報技術セクターが市場全体に占める割合が高まり、似た値動きをする銘柄の比率が増している。「この構造はすぐには解消されにくく、今後も株式のリスクを高める可能性は否定できない」と長谷川氏は語る。
資産クラスは複数持つことが重要

次に長谷川氏から、他の資産クラスとの連動性について解説が行われた。ある資産と別の資産がどれだけ似た動きをするかを数値化した指標が「相関係数」だ。1に近いほど連動し、0前後なら値動きは無関係、マイナスなら逆に動く傾向を示す。

米国株と各資産の相関係数の推移を見ると、日欧株や新興国株との相関は2000年以降一貫して高い。長谷川氏は「地域を変えても、同じ株式という資産クラスである以上、似た値動きになりやすい」と説明する。

これに対し、異なる資産クラス同士では相関が下がる効果が期待できる。たとえば金と米国株の相関係数を見ると、0近辺で推移しており、両者が連動しにくいことがわかる。


ただし、異なる資産クラスであっても連動性が高まる場合がある。たとえば株式と債券だ。上の図で緑のチャートが示す米国債は、2020年頃までは米国株との相関が0付近だったが、足元では大きく上昇している。長谷川氏によると、その要因のひとつはインフレだという。

2020年頃から世界的な物価上昇が懸念され、各国の中央銀行は大幅かつ急速な金融引き締めに動いた。米国の物価指標が予想を上回るたびに利上げペースの加速が意識され、金利が急上昇。債券と株式がともに下落する場面がたびたび生じた。

また、直近では3月頃、中東情勢への懸念から原油価格が上昇し、利上げが意識されて株安・債券安となり、相関が高まる場面もあった。逆に、景気後退が意識される局面などでは、株安のなかで債券が買われ、相関が下がることもある。

このように連動性は市場環境によって変わりうるが、「長期的に見れば、同一の資産クラス内よりも異なる資産クラスのほうが相関は下がり、分散効果が期待できる」と長谷川氏は説明する。

たとえばリーマンショックの局面では、株式はほぼ全地域が同じように下落した一方、債券や金は株式と異なる値動きをしていた。このように値動きの連動性は時期によっても変化する。
だからこそ「分散する資産クラスは複数持つべきだ」と、ウェルスナビは考えているという。

なお長谷川氏によると、世界株とウェルスナビのポートフォリオでは、5%超下落した月数に違いが表れているそうだ。世界株が31カ月あったのに対し、ウェルスナビ(リスク許容度3)では17カ月にとどまる。あらゆる資産に分散投資することで、世界株の下落と比べてショックを抑え、大きく下落する月数を減らせている。

リスクが高いポートフォリオほど期待リターンは大きくなるが、下落に耐えられず売却してしまえば、そのリターンを十分に得られない。そこでウェルスナビは、長期運用を続けられるよう、個人のリスク許容度に応じた複数のポートフォリオを用意している。「地域だけでなく資産も分散してショックを和らげ、より長期的な視点で運用してほしい」と長谷川氏は話す。
不透明な相場だからこそ、基本に立ち返りたい

最後に佐藤氏より、ウェルスナビ利用者における運用実態が示された。 佐藤氏によると、コロナショックで米国株が3割ほど下落した局面でも、1円でも出金した顧客は5%未満にとどまったという。自身が許容できるリスクの範囲内で運用していたことが要因のひとつだろう。

加えて、「年齢やライフステージの変化に応じて、債券比率を高めるなど安定的な運用へ切り替えていくことも大切」と佐藤氏は説明する。

また、運用実績を見ても、長く続けるほどリターンは増えており、2年目以降は9割超がプラス、5年目以降は9割超が20%以上のリターンとなっている。
「不透明な相場だからこそ、基本に立ち返り、長期・積立・分散の重要性を引き続き発信していきたい」と佐藤氏は締めくくった。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
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