銀歯の下で密かに進行する「ステルスむし歯」は、目視やレントゲンでも発見が難しく、痛みが出ないまま重症化することがあります。さらに、再発するたびに治療を繰り返せば、歯そのものの寿命を縮めてしまう可能性もあります。
○歯の寿命を縮めるのはむし歯ではなく“再治療”、ではその対策と選択肢とは?
歯は無限に治療をくり返せるわけではありません。一般的に、1本の歯に治療を重ねられるのは5回程度が限界で、それを超えると歯質がすり減り、強度も落ちて、破折のリスクが高まります。銀歯むし歯の治療をくり返すたびに、実は歯を失うカウントダウンが進んでいる……そう考えていただくとイメージしやすいと思います。
では、銀歯むし歯にどう向き合えばよいのでしょうか。ここでもう一度、お風呂の話に戻ります。今度は「令和のお風呂」を思い浮かべてください。現在、主流の「ユニットバス」は、あらかじめ工場で一体成型されたパーツを現場で組み立てる構造です。継ぎ目が少ないため、湿気や水分が漏れる心配がほとんどありません。
むし歯治療にも、これと同じ発想の選択肢があります。それがセラミックを使った治療です。
さらに、歯と一体化することで、削られて弱くなった歯そのものを内側から支える効果もあり、破折のリスクを下げて、歯の寿命を延ばすことにもつながります。色も天然の歯に近づけられるので、見た目の自然さもメリットです。
ただし、1つだけ知っておいていただきたいことがあります。近年、保険診療でも歯に近い白色の詰め物(CAD/CAM冠など)が使えるようになりました。見た目はセラミックに近いのですが、性能は別物です。素材はセラミックと樹脂を混ぜたハイブリッドで、いわば「子ども用のプラスチック食器」に近い存在。使ううちに表面に細かい傷がつき、そこに汚れや細菌がたまりやすくなるため、むし歯や歯周病のリスクが上がります。時間とともに変色しやすく、強度もやや弱いため、割れることもあります。
「それならセラミック一択では」と思われるかもしれません。
銀歯むし歯のリスクを抱えながら保険の銀歯治療を選ぶか、目先の費用はかかっても歯の健康と長期的な予後を優先してセラミック治療を選ぶか――どちらが正解というものではありません。これからの人生を考え、後悔のない選択をしていただければと思います。
宮本日出 みやもとひずる 日本顎関節学会代議員・専門医・指導医。1965年、石川県金沢市生まれ。愛知学院大学歯学部卒業後、石川県立中央病院歯科口腔外科に勤務。1994年、豪アデレード大学歯学部で研修し、1996年から同大学歯学部口腔顎顔面外科招待研究員に。2000年から明海大学歯学部の教員に就任。2007年、幸町歯科口腔外科医院を開業。国内外に160編以上の論文を発表している。著書に『お口からの感染予防』(ギャラクシーブックス)、『レモン水うがいダイエット』(あさ出版)がある。











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