「歌手は無理だろう」から「まさか」の歌手デビュー 楽曲に込めた父の言葉
「明日、試験だろ。頑張れとは言わないからな」――。モデル、タレント、プロ雀士、Mリーガーとして第一線を走り続け、デビューシングル「国士無双LOVE」で、歌手という新たな一歩を踏み出した岡田紗佳。中学生の頃、表舞台に立つ職業として最初に憧れた歌手。しかし、モデルとして芸能界入りを果たした後、マネージャーから「歌手は無理だろう」と告げられ、その夢は次第に現実味を失っていく。それでも、目の前の仕事に真摯に向き合い続けた先に、思いもよらない未来が待っていた。それは、一打一打を積み重ねながら道を切り開いてきたプロ雀士・岡田紗佳のキャリアとも重なる。
人生初のレコーディングで感じた不安、歌手デビューをニュースで知った家族の反応、自身の名を広く知らしめた“国士無双13面待ち”の舞台裏、そして、「一生揺るがない」と語る麻雀への思いとは。
念願の歌手デビューを飾った楽曲。その裏には、今も支えとなっている父の言葉が息づいていた――。
○「まさか歌手になれるとは」中学生からの夢が現実に
――「国士無双LOVE」が「Mトーナメント2026」のエンディングで流れていました。周囲は、どのような反応でしたか?
エンディングで使われるようになって、「これまではエンディングまで見なかったけど、最後まで曲を聴きたいから見ている」「すごく耳に残る」と言ってくださる方や、「早くフルで聴きたい」と楽しみにしてくださったファンの方も結構いました。
――以前から歌手に憧れていたそうですね。最初に意識したのはいつ頃か、覚えていらっしゃいますか?
小学生か中学生……たぶん中学生だったと思います。
――これまでにそのような歌手デビューのチャンスは。
全くなかったですね。今の事務所にスカウトされて入った時、やりたいことの一つとして「歌手」と書いていたと思うんですけど、「まあ無理だろうな」と言われた気がします(笑)。
――それはもったいない! 以前からYouTubeで公開されていた歌唱動画も話題になっていました。今回のデビューにつながった可能性もありそうですね。
どうなんでしょうね。仕事を取ろうと思ってYouTubeに載せたわけではなく、個人的な趣味でやっていただけなんですよね。
歌手デビューのお話をいただいたのは、昨年の秋ぐらいです。念願というより、自分にとっては「まさか」の出来事。事務所からは無理だと言われていましたし、まさか歌手になれるとは……。
○人生初のレコーディング「そわそわしていました」
――人生初の本格的なレコーディングはいかがでしたか?
長くこの業界にいながら、しっかりレコーディングをするのは初めてだったので、そわそわしていました。レコーディングでは、全部を通して何度も歌うのではなく、部分的に繰り返し歌って。短いフレーズを細かく録っていきました。3曲収録したのですが、それぞれ2時間ぐらいかかったと思います。自宅で練習して臨んだのですが、実は曲をいただいてからそれほど時間がなかったんです。3曲それぞれ全く違う曲調なので、チャレンジしていて楽しかったですね。
――「国士無双LOVE」は、麻雀の魅力を表現したリード曲です。
一番キャッチーですし、音数も多い曲です。
――2曲目「カケヒキ・フライディナイト」は、夜の街でのスリリングな駆け引きと女性の心理戦を描いています。
シティポップで、少しレトロな感じの曲でした。もともとレトロな曲が好きだったので、割と入りやすかったですね。
――3曲目「負けを知った私に敵はいない」には、岡田さん自身の考え方や人生観も反映されているそうですね。
作詞のアイデアにも関わらせていただきました。自分の考え方や人生観を反映させて、曲を聴いたファンの方々が何かにチャレンジする時、鼓舞できるようなものになればいいなと思っています。
――制作陣と話し合いながら作られたのでしょうか?
そうです。自分で全部書いたわけではなく、話し合いながら「こういう内容にしたい」と伝えて作っていただきました。
――お気に入りのフレーズはありますか?
「頑張れは言わない わかってるから」というところです。父に言われたことが元になっています。
――努力をきちんと見てくれていることが伝わる言葉ですね。
そうですね。ただ、見てはないんですけどね(笑)。父とは一緒に過ごしたことがほとんどないので。そういう中でも、特に記憶に残っている言葉です。
――今後は作詞にも挑戦してみたいですか?
何かを書き留めたりしたことがないので、ちょっと恥ずかしいかもしれません。日記すらほとんどつけたことがない……というか、続かないんですよね(笑)。
○松田聖子は父の影響 歌手デビューを知った家族の反応は
――先日行われた会見では、カラオケで松田聖子さん、L’Arc~en~Ciel、Janne Da Arcなどを歌うとおっしゃっていましたね。
松田聖子さんは完全に父の影響です。L’Arc~en~CielやJanne Da Arcは、高校生の時に付き合っていた人がよく聴いていました。父は音楽をずっとやっていて、ピアノも弾いていた人だったので、いろいろな曲を教えてもらいました。といっても、家で演奏していたところを見たわけでもないんです。車の中でいろいろ聴かせてもらっていました。
――ほかにはどのような音楽を聴いてきましたか?
バンド系ならL’Arc~en~Ciel、Janne Da Arc、ABC(Acid Black Cherry)、the GazettE、アンカフェ(アンティック-珈琲店-)とか、いわゆるヴィジュアル系のバンドをたくさん聴いていました。サブカルチャー系の音楽やアニソンも好きで、あとはYUIさんやaikoさんも聴いていました。
――とても幅広いですね。念願の歌手デビューをされたわけですが、ご家族の反応は?
家族は、普通にニュースで知ったと思います(笑)。おばあちゃんとお母さんからすぐに連絡が来ました。お父さんからは来なかったですけど(笑)。
国士無双13面待ちをあがっても「すごいストレス」 当時の心境を告白
○芸能界入りに反対した母、プロ雀士になって変化――芸能界入りを目指した当初、お母さまは反対されていたそうですね。
ずっと止められていました。「そんなの、お金にならないからやめな」「売れるわけがない」と言われていて、「それより勉強して、ちゃんとした企業に入りなさい」と教えられた家庭でした。
自分から事務所に応募するのは無理だと思っていたので、「スカウトされたら入ろう」とずっと考えていました。それで今の事務所にスカウトされたことがスタートでした。
――その後、お母さまの反応に変化は?
麻雀プロになってから、すごく応援されるようになりました。母は麻雀がすごく好きなので、麻雀プロになって良かったなと思います。対局を見た母からは、「もっとこう打ちなさいよ」とアドバイスされることも。的確かと言われたら、的確なわけないんですけど(笑)。
○「私にとって本当に特別な役」国士無双への思い
――相手はプロですからね(笑)。リード曲のタイトルにもなっていますが、岡田さんにとって「国士無双」とはどのような役ですか?
本当に変わっている役です。麻雀は基本的に4面子1雀頭という、組み合わせを全部で5つ作るゲームですが、国士無双は唯一、そうした組み合わせを何も作らない役なんです。
麻雀の中でもかなり特殊ですし、必要な牌を一つひとつそろえていくところも面白い。国士無双という四字熟語のもともとの意味も面白いですよね。
私のことをあまり知らない人でも、国士無双13面待ちの動画を見てくださっている方もいるので、私にとっては本当に特別な役なんだと思います。
――13面待ちの場面については、今も聞かれますか?
よく聞かれますね。「なぜリーチしたのか」「何を考えて、あんなに長い時間を使ったのか」とか。特別な決勝戦で、いろいろな条件があったので、あの場面では迷いました。聞かれたら、その時に考えていたことを今もよく話しています。
――13面待ちでの和了は人生で初めてだったそうですが、対局後はどのような心境でしたか? 自分だったら興奮して眠れなくなりそうです(笑)。
それが意外と冷静だったんですよ(笑)。国士無双自体はよく見かけるので、正直、私にとっては国士無双をあがったことはどうでもよくて、その決勝戦で優勝できたことの方が、とにかくうれしかったです。
あの動画が、後になってここまで再生されるとは全く思っていませんでした(2026年8月21日時点で1,974万再生 『麻雀最強戦チャンネルpresented竹書房』より)。すごく珍しい役満であることは間違いないですが、これほど多くの人に知ってもらえるチャンスになるとは思っていなかったんです。
麻雀プロとしては、役満をあがっただけで優勝できなかったら、それほど喜ばしいことではありません。「良かった、勝てて」という感じです。
――確かに、役満をあがってもその後も対局は続きます。
そうなんです。負けたら恥ずかしいじゃないですか、役満をあがっておいて(笑)。優勝できて本当にホッとしました。あれで対局が終わりだったら最高ですが、まだ続きがあったので、あがった瞬間もすごいストレスで。「これで優勝できなかったら、どれだけ叩かれるんだろう」と考えたりもしました。
――それほど冷静でなければ、プロは務まらないわけですね。
たぶん、プロになるような人は役満をあがっても、何とも思わないはずです。
○岡田紗佳が思う“唯一無二の人”は「松田聖子さん」
――国士無双には、「世に二人といない優れた人物」という意味もあるそうです。岡田さんにとって,
“唯一無二”だと思う人はいますか。
難しいですけど、松田聖子さんですかね。私はアイドルがすごく好きなんです。今のアイドルはグループで活動して、その中から一人の推しを見つけて好きになることが多いと思います。でも、若い女の子が一人で日本中の視線を集めて、歌で魅了する。本当に唯一無二の存在だと思います。松田聖子さんの曲は聴いていましたが、特にデビューしてから数年間の、初期の曲がすごく好きです。
――「13面待ち」を目指すように、岡田さんはモデル、タレント、プロ雀士、Mリーガー、そして歌手と肩書きが増えています。次に加わりそうなのは「俳優業」ですか?
それはよく聞かれますね。でも、どう答えればいいのかちょっと難しいです。俳優と麻雀の仕事は、スケジュール的に両立が厳しいと思いますし、そもそも私がドラマや映画に全く興味がないんです。映像作品を全く見ないので、今まで「やりたい」と一言も言ったことがありません。
――アニメは見るそうですが、声優はいかがですか?
ちょっと滑舌が悪いので(笑)。やりたくないわけではないんです。「できないだろうな」「向いていなさそう」と思っています。滑舌が悪い役や、中国語を使う役、麻雀を打つ役など、役を選べばできるかもしれません。でも、いろいろな役を演じ分けられるかと言われたら、絶対にできないと思います。
○「麻雀は一生揺るがない」もし出会っていなければ芸能界引退も
――新たな分野へ挑戦すること自体は好きですか?
チャレンジするのはすごく楽しいですが、すごく労力が必要なこと。一つひとつをきちんと安定させてから、次へ進みたいです。次から次へと、めちゃくちゃチャレンジしていけるタイプではありません。
麻雀プロになってから、しばらくテレビにはあまり出ていませんでした。プロになって10年ほど経ち、ある程度落ち着いたことで、ようやく歌手にチャレンジできるメンタルを持てたのだと思います。今すぐ次のことを、とはあまりなれないですね。
――ご自身のことをよくわかっていらっしゃるのですね。仕事を選ぶ際の基本的なスタンスは?
基本的には来るもの拒まずなので、「やりたくない」ということはなく、来たらやります。ただ、その中でも向き不向きはあると思うので、続けられることを続けていきたいです。
――活動の軸は、やはり麻雀ですか。
麻雀ですね。これは一生揺るがないと思います。麻雀の試合が、一番自分をエキサイトさせてくれます。
――麻雀との縁がなければ、どのような人生を歩んでいたと思いますか?
芸能活動はやめていたでしょうね。それほど仕事もなかったので。モデル業だけでは難しかったです。大学4年生の時に、たまたまいただいた麻雀の仕事。それがなければ、大学を卒業して、きっとどこかに就職して別の人生を歩んでいたはずです。
■プロフィール
岡田紗佳(おかだ・さやか) 1994年2月19日生まれ、東京都出身。青山学院大学在学中にファッション誌『non-no』の専属モデルとして活動し、2017年に日本プロ麻雀連盟所属のプロ雀士となる。Mリーグでは「KADOKAWAサクラナイツ」のメンバーとして活躍。モデル、グラビア、タレントなど幅広い分野で活動し、2026年7月22日にシングル「国士無双LOVE」で歌手デビューを果たした。











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