北朝鮮が、生成AIの代表格であるChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)の開発ではなく、監視や軍事、サイバー工作など特定の用途に特化した「任務特化型AI」の実用化を進めている可能性が浮上した。韓国の国家安保戦略研究院(INSS)の金ミンジョン先端技術戦略センター長が15日に公表した戦略報告「北朝鮮AI能力評価と安全保障上の含意―音声AI技術と演算環境を中心に」が明らかにした。
報告書は、北朝鮮の研究者らが公開した音声AI関連の論文を分析。音声認識や音声合成、イントネーション識別、音声活動検出などの研究成果を精査した結果、北朝鮮が限られた計算資源を前提としながらも、実用性の高いAI技術の開発を着実に進めていると評価した。 金センター長は、北朝鮮のAI技術について「旧世代GPU、民生用グラフィックカード、携帯端末向け演算チップを活用した特定任務型AI機能の実装段階にある」と分析。その上で、顔認識や音声合成、抑揚識別、映像追跡といった機能は、国内監視体制の高度化だけでなく、軍事分野やサイバー攻撃にも応用され得ると警告した。 実際、近年の北朝鮮は無人機や自律兵器への関心を強めている。今年3月には、金正恩朝鮮労働党総書記が無人機開発を視察し、「人工知能技術分野を最も重要に発展させるべき部門」と位置付けたと朝鮮中央通信が報じている。AI技術の発展は、既存のサイバー戦力と結びつくことで、暗号資産窃取やなりすまし、ディープフェイクによる世論操作など、新たな脅威を生み出す可能性もある。 さらに注目されるのは、北朝鮮の研究環境に米半導体大手エヌビディア製のGPU(画像処理半導体)が確認された点だ。報告書によると、研究に使用された機材には「Tesla P100」や「GeForce RTX 2070」が含まれていた。いずれも最新世代のAI向け半導体ではないものの、顔認識や音声処理、映像追跡など特定任務向けのAI機能を開発・検証するには十分な性能を備えているという。 米国の対北朝鮮輸出規制では、こうした半導体の北朝鮮への移転は禁止されている。しかし、研究に実際に利用された事実が確認されたことで、中古市場や第三国を経由した流入の可能性も指摘されている。
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