高市早苗首相がXで明かした「総理就任以来、0時間~3時間睡眠が常態化」との一文が物議を醸している。これまでも「働いて×5」発言などで多忙ぶりを強調してきた高市首相だが、今回は心配よりも呆れや批判の声が目立つ。
支持率低下に拍車?
大失敗の「睡眠不足アピール」
高市内閣の支持率は下落傾向にあり、毎日新聞が7月18、19日に実施した世論調査では、初めて不支持率が支持率を上回ったと報道された(7月19日 毎日新聞)。
支持率の低下を象徴するかのようだったのが「0~3時間睡眠」投稿に対する反応だ。三連休の最終日だった7月20日夜、高市早苗首相はXに「今日の海の日の午後は、私的に使える貴重な時間になりました」と綴(つづ)り、「久々に5時間も睡眠を取れた」と続けた。
これだけなら良かったのかもしれない。しかしその後の内容が物議を醸した。特に批判が集中したのは、5時間睡眠の後に()をつけて綴った「総理就任以来、0時間~3時間睡眠が常態化」の部分だ。
筆者がSNSやニュースサイトのコメント欄を確認した限り、批判的な反応が目立つ印象だ。怒りというよりも、もはや呆れの声が多く感じられる。なぜこれほど多くの人が「0~3時間睡眠」投稿にうんざりを感じているのか。その理由を分析してみたい。
繰り返される
「寝てない」アピール
高市首相の「働く」「寝てない」アピールは今回に始まったことではない。首相に就任した昨年10月には「ワークライフバランスを捨てます」「働いて×5まいります」と宣言し、11月には「睡眠時間は大体2時間。
同じ月には午前3時から国会答弁準備のための勉強会を開いたことも問題視された。
さらに今年の6月には衆議院予算委員会で「サナエトークン」をめぐる疑惑を追及され、「質問が自分のところに来るのは真夜中の2時、3時くらい」「金曜日の夜から今朝までの間、ほとんど睡眠もとってません」と主張し、SNSでは「首相のいい訳が小学生並み」と辛辣な言葉もあった。
働き過ぎや睡眠不足について本人が言及するたびに批判の声が上がるのに、馬耳東風かのように繰り返されるのだからたまらない。高市首相本人が、超過労働を美徳と考えているような印象を与えてしまう。
振り返ってみれば、首相就任の際の宣言については、「自分が働くと言っているだけなのだから」「他の人にそのような働き方を強いているわけではない」といった擁護意見も見られた。
しかし今回の投稿での短い睡眠時間については眉をひそめる人が多く、正面からの苦言が並ぶ。例えば、産経新聞「0~3時間睡眠が常態化」高市首相のアピールに波紋 野党からは判断力低下など懸念」のYahoo!ニュース配信記事では、コメント欄で複数の識者が問題を指摘。PublicBeyond 代表取締役の遠藤結万氏は「行政トップの職責は重要な判断を自身の責任のもとで行うことにあります。例えば飛行機のパイロットが3時間以下の睡眠だったとすれば乗客は安心して命を預けられるでしょうか」と語っている。
昨今トップアスリートや有名実業家たちの間では、むしろ8~10時間の長時間睡眠を取るべきと言われることが多い。長い労働時間ではなく、オンオフの切り替えや短時間での集中力が重視される。
睡眠時間を削る働き方は令和の現代では決して美徳ではなく、むしろリスクが多く非効率的な働き方と見なされることすらある。自分の健康を損ねるだけではなく、周囲にも悪影響を与えかねないのである。
多くの人の頭をよぎった
「地獄のミサワ」との相似
「0~3時間睡眠」以外にも気になるのは、「数千通も溜まってしまったメール処理」「分厚い資料を早朝から深夜まで読み続け」といった、多忙アピールである。実際に数千通もメールが溜まった状態なのであれば、仕事をそこまで滞らせるまでになんとかならなかったのかと感じるし、資料をわざわざ「分厚い」と表現するのも「頑張ってるワタシ」アピールのようで鼻につく。
そして、ネット民の少なくない数の人が頭に思い浮かべているのが、「地獄のミサワ」という漫画家が描くキャラクターである。
「地獄のミサワ」は2010年代前半にネットを中心に人気を博した漫画家で、独特の画風で描かれるナルシストで自信家のキャラクターが周囲をイラっとさせるセリフを吐く。代表的なのが「寝てない自慢」だ。「俺、2時間しか寝てないわ」「つれー実質1時間しか寝てないからつれーわー」などと周囲にアピールする。その風刺は今でもネットミームとなっているほどのインパクトがあった。
当時「地獄のミサワ」を読んだ世代は、「寝てない自慢は格好悪い」と刷り込まれた。自分を大きく見せたい若者がしてしまいがちなムーブであり、だからこそ格好悪いのだ。
同じく2010年代前半には過労死や過労自死についての関心も高まり、働き方に対する考え方が変わっていった。
「0~3時間睡眠」投稿の
“信じがたい一文”
高市首相のX投稿は文字数にして約650文字。原稿用紙1枚半程度のその文章の後半で綴ったのは、忙しい中で家事もこなそうとしていることだった。
「平日は、公邸に戻ってから、風呂掃除、入浴、夕食、夕食後の洗い物、洗濯、簡単な掃除まででプライベートな時間は精一杯」「昼からは、手付かずだった大量の洗濯後のハンカチやインナーのアイロンかけと、お裁縫(スカートの裾のほつれのまつり縫いやジャケットの緩んだボタンの補強)を一気に処理」などである。
こういった部分についても、忙しいなら他の人に代わってもらえば良いのではないかという指摘が相次いだ。言うまでもなく、国のトップが「0~3時間睡眠が常態化」する中ですべきことではない、という意見である。
しかしここで同調を示した女性がいた。国光あやの外務副大臣だ。国光副大臣はXで次のように投稿している。
「分かります!涙。国光も下手なアイロンかけで何度手を焦がしたか。。
この擁護に、高市首相がなぜこんな投稿をしたのかのヒントがあるように感じられた。
一般人に置き換えた場合、「家族に負担」や「家族が人を入れるのを嫌がる場合」といった様々なケースは当然考えられる。高市首相や国光副大臣は、家事と仕事の両立で四苦八苦する女性たちから共感が得られると思っているのではないか。しかし高市氏は一般人ではなく、首相である。
念のために言っておくと、家事が女の仕事だという価値観がすでに過去のものとなりつつある。また、たとえ高市首相の家庭で「家族に負担」や「家族が人を入れるのを嫌がる場合」といった状況があったとして、それを国民の側が慮らなければならない理由はない。
高市首相がいくら「一般の女性」たちと同じような苦労があるとアピールしようとしても、それはさすがに首相の仕事を優先してくれ、という話になる。初の女性首相としての家事アピールだったとすれば、完全に空気を読み違えている。
ここへ来ての支持率の低下や、中傷動画疑惑の追及から、疲れのあまりああいった投稿をしたのではないかと勘繰る声もある。実際はわからないが、どうかこれ以上の「多忙アピール」は、国民の心を動かさないと気づいていただきたい。

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