【写真】ドラマ『Tokyo middle 30』(フジテレビ系)の場面カット【6点】
◆35歳が女性の分岐点になったのは……?
ひと昔前の日本を振り返ってみよう。1980年代ごろまでの高度経済成長期からバブル経済期以前までは、女性のすべては「結婚、出産」に集約されていて、分岐点は24歳。25歳になると「12月25日に売れ残ったクリスマスケーキ」と鼻で笑われていた。決して嘘ではない。もっとも、終身雇用とお見合い結婚が全盛だった当時なので、就職、結婚、出産、育児の人生レールに乗っかるのは、義務教育と同じことだったらしい。女性は皆、サザエさんのように専業主婦になっていたわけだ。
バブル崩壊後の1994年ごろの女性の分岐点は、三十路に突入する前の29歳。もちろん仕事は寿退社をして、結婚と出産をするのが前提。1985年に発令された男女雇用機会均等法の影響もあって、女性の雇用環境もほんの少しずつ改良されつつあるものの、30歳以上の女性社員を揶揄する「お局様」の言葉もあったので、やはり女性の生き方は「高身長、高収入、高学歴」の旦那を捕獲することに帰結していた。
この当時、放送された山口智子主演のドラマ『29歳のクリスマス』(フジテレビ系)は、女性層を中心に大ヒット。私もリアタイしながら「29歳になったらこういうことで悩むのか」と考え、いつしか自分の生き方のロールモデルになっていた。今から約30年前のことだ。
◆SNS、東日本大震災、卵子凍結がキーワードに
そして冒頭通り女性の分岐点が1991年生まれの35歳となり、多くの作品が制作されている。ではなぜ、30年間の時間経過で5年間も伸びたのか? これは私の推論ではあるが、「SNS、東日本大震災、卵子凍結」の3つが関わっているのではないかと感じる。
ちょうどガラケーからスマホへの転換期があって、SNSがインフラになった年代だ。他人の虚像された生活を垣間見ることで疲れ、愚痴を読んで「育児とはこんなに大変なのか」と現実を知る。それなら自分は結婚も出産も不要だと、老後に向けた投資を始める女性も増えたはず。加えて20歳前後に有事(東日本大震災)を経験して、目の前の現実が消えた瞬間の絶望を知り、自分に何ができるのか、何をしたいのかを問いただろう。誰かと共生する選択肢を捨て、居心地のいいコミュニティーを求めた人もいたと聞く。ジェンダー・アイデンティティがバラエティー番組のワンコーナーではなく、通常として認知されはじめたのもこの世代は目の当たりにしている。
そして出産リミットの年齢が上がったのは大きい理由だ。
さて、冒頭で注目した“女性・35歳”のドラマたち。その中でも『Tokyo middle 30』が面白い。美容外科医の夫と5歳の息子と暮らす専業主婦の佐倉麻紀(仲)、恋人と同棲中で妊娠が発覚した教師の永野薫子(深川麻衣)、仕事はできても恋人と貯金のないアパレル店員の山地遥(のん)。高校の同級生だった3人は偶然再会して、再び会うようになる。
が、高校時代のように3人とも同じ生活環境ではなく、悩みも三者三様。分岐点の年齢が変遷したものの、仕事、恋愛、結婚、出産、育児と私がドラマで知っている30年前から悩む内容は大きくは変わらない。そんな様子を「女3人は揉めるぞ~」と、とうの昔に過ぎてしまった35歳をなつかしく思いながら見ている。
薫子:(恋人が)結婚の話なると不機嫌になる
麻紀:はあああああああ!? やることやっといて?
セリフはニュアンスだけど、第2話のこんな掛け合いに笑った。現役でも、これからでも、過ぎ去った時間でも“35歳”を見直すきっかけにぜひ。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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