女優・水野美紀がプロデューサーとして世界から注目を集めている。現在、水野プロデュース舞台の第二弾「礎の響 <天下の分け目に立つ者> ―Those Who Stand at the Divide―」(16日まで、東京芸術劇場 シアターウエスト)が上演中だ。

セリフに頼らないノンバーバル(非言語)演劇で、第一弾は海外展開も行われたほど。なぜ、熱い視線を集められたのか。水野と漢字一字違いの名前の記者が第二弾のゲネプロを鑑賞し、魅力に迫った。

 ノンバーバル演劇を鑑賞するのは初めて。7月に新国立劇場バレエ団の「人魚姫」を鑑賞したばかりだったので、バレエと近い役者の身体表現と音楽の融合がメインの魅力になるのかと考えていた。

 会場に到着し、まず受け付けで驚いた。片面に「〇」、反対側に「×」と書かれた意思表示カードを手渡された。観客参加型とは知っていたが、どこで使うのか。劇場に入ると、すでに席に座っていた人たちの多くが意思表示カードを不思議そうに見ていた。

 物語の主軸は1600年の関ヶ原の戦い。観客が歴史を変えるのか、守るのか、傍観するのか。観客に物語の選択を委ねる新しい試みを展開する。

 オープニングからいきなり客席通路を使った演出があった。和楽器とヒューマンビートボックスの親和性の高さも初めて知った。水野演じる、日本神話に登場する神・伊邪那岐(イザナギ)は、豪華な衣装、真っすぐに伸びた背筋、何を考えているか分からない不気味な表情で、重厚感を与える。伊邪那岐が持つ謎の機器とスクリーンに映る西暦の数字で、物語は1600年の関ヶ原の戦いへ。あっという間に世界観に没入した。

 アクションでも一目置かれる水野がプロデュースするからこそ、殺陣のシーンは上演前から楽しみにしていたが、想像以上だった。素早い剣さばき、ひとつひとつのジャンプが高い。客席通路を猛スピードで役者が駆け抜ける。疾走と臨場感で引き込まれた。大谷吉継役の木原瑠生は、約1時間の公演でほぼ動きっぱなし。汗だくになっても大谷の苦悩を演じる姿は美しかった。アクションシーンにはスクリーンを用いたゲームのような演出方法、コメディー要素もあって、物語の緩急は抜群だった。

 終盤、肝となるところで観客に求められた意思表示カード。ここでか、と悩んだ。多数決で物語が変わる。私は「×」を掲げたが、ゲネプロ観客全体としては「〇」が多数で、物語もその方向に進んだ。確かに別の選択の物語も見たい。何度も劇場に足を運びたくなる演出がうまいと感じた。

 当初は懸念していたノンバーバル演劇は全く気にならなかった。むしろ役者の一挙手一投足に集中した。言葉がなくても緻密(ちみつ)に作り込まれた役者の動き、表情、世界観にマッチした音楽で伝わる。第一弾が上演後、ブロードウェーでのプロモーションを行い、フロリダ、ラスベガスからオファーを受け、ニューヨークで出演者のイベント出演につながったこともうなずける。今後もさらなる海外での飛躍に期待が集まりそうだ。

 気になったのは、どのようにこの舞台を作り上げたのか。

水野は「セリフの書き込まれた脚本を読み込むことからスタートし、音楽のカウント取り、そして細かなニュアンスを伝えるための芝居のブラッシュアップ。客席も含めた複雑な動線づくり。一人一人が自分の役割に責任を持ち、能動的にキャラクターを構築していく」と説明。「いつもと違う空気、感覚を、意味付けされない余白を、どうぞ面白がって皆様の想像力で彩っていただけたらと思います。皆様が目撃し、心に受け取ったものが、正解です!」。セリフがないからこそ、難しく考える人もいるかもしれないが、水野は観客が自由に楽しめることを強調した。

 米テレビ界を席巻した「SHOGUN 将軍」の真田広之を始め、国内外で演技はもちろん、企画や製作にも大きく携わる役者が増えている。水野のノンバーバル演劇もさらなる飛躍に期待が集まりそうだ。(水野 佑紀)

 ◆水野 美紀(みずの・みき)1974年6月28日、三重県出身。52歳。87年に「第2回東鳩オールレーズンプリンセスコンテスト」で準優勝し、芸能界入り。2001年、フジテレビドラマ「女子アナ。」で初主演し、その後「踊る大捜査線」シリーズなど。

現在、フジテレビ系「突然ですが占ってもいいですか?」に出演中。9月18日公開の映画「踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!」に出演する。身長168センチ。

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