「33歳、男です。ゲイでもない。
性同一性障害でもない。恋愛対象は女性。それでも、豊胸しました。(投稿より引用)」
男性でありながら豊胸をカミングアウトして、X上で大きな反響を呼んだのが、歌い手兼インフルエンサーのRioさん(@rio_kbys2)だ。

豊胸手術にかけた費用は総額120万円。そこまでしてなぜ手術に踏み切ったのか。本人に話を聞いた。

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女性と男性、独自の“一人二役”スタイル

120万円かけて「豊胸手術」した33歳男性を直撃「ゲイでもない。性同一性障害でもない」
中学時代のRioさん
「初めまして! Rioと申します! えーこう見えて……男性です!」

サラサラのロングヘアーに、ワンピースやスカートを纏った姿で、自己紹介とともに歌唱動画を発信するRioさん。ディズニーメドレーからアニソン、ボーカロイド、ビジュアル系バンドまで、SNS上で様々な楽曲をカバーする歌い手として活動している。

Rioさんの動画は、男女がデュエットしているように、地声と高い声を使い分けて歌声を披露しているのが特徴的だ。可愛く着飾って高い歌声を披露する“女性の姿”と、短髪姿で低い地声で歌う“男性の姿”を演じ分ける、“一人二役”のスタイルが反響を呼んでいる。

Rioさんの歌い手としての原点は中学3年生の頃。ニコニコ動画に投稿し始めた「歌ってみた」動画だった。


「10歳頃まで、父の転勤でポルトガルやブラジルに住んでいたんです。そこから帰国して国内の学校に通うのですが、クラスメイトが全員日本人なのが逆に馴染めなかったんです。

そこでハマっていったのがインターネット、特にニコニコ動画でした。当時は『涼宮ハルヒの憂鬱』や『アイドルマスター』のキャラソンを歌って投稿していましたね」

ニコ動経由で男の娘文化に触れる

高校生になるとニコニコ生放送で配信を始め、大学生になるとツイキャスでもライブを行うようになる。ファンからの投げ銭も増え、次第にネット上で歌い手仲間との交流が広がり、リアルでライブを主催するようにもなった。都内の私立大学に通いながら、歌い手としての活動にのめり込んでいった。

また同時期に、Rioさんと近しい界隈にあったのが、「男の娘」と呼ばれるサブカルチャーだった。

一般的には、男性として生活しながら、女性的な服装や外見を楽しむ人を指す言葉として知られる「男の娘」文化。Rioさんが当時ハマっていたニコニコ動画にも、こうした界隈と親和性があった。歌い手だけでなく、アイドルマスターやボーカロイドのキャラクターに寄せて、女装姿を発信する男性クリエイターも数多く存在していた。

X JAPANのYOSHIKIと同じステージに

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そうそうたるメンバーと同じステージに立った
こうした音楽とサブカルチャーが交差するネット文化で、自身も発信を続けていたRioさんにとって、女装文化は身近なものだった。大学在学中には、秋葉原の女装メイド喫茶で働くようになり、ワイドショーの特集で取り上げられることもあったそうだ。

配信やライブ活動に加え、女装メイド喫茶でも働くなど、次第に表現活動が生活の中心となった。Rioさんは就職活動を見送り、歌い手として生きる選択を行う。


そんな23歳の頃、ソニーミュージック・ニコニコ動画・音楽事務所のマーヴェリックが共同主催する、“ビジュアル系のダンスバンド”を育成のオーディションが開催される。Rioさんはそのコンペでグランプリを獲得して、バンド活動を本格的に始めていく。

「さいたまスーパーアリーナや幕張メッセなどの大舞台で、X JAPANのYOSHIKIさんや、L’Arc~en~CielのHYDEさんなどとも一緒のステージに立てて感動しました。

ビジュアル系の方って、男性でも綺麗に化粧していて、雰囲気が美しいじゃないですか。そうした晴れ姿を見て影響されたことも、自分の美意識がより一層大きく変わったきっかけだったと感じています」

自分のなりたい姿に近づきたかった

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整形前(写真左)と整形後(写真右)
そこから、豊胸へとつながる想いが芽生え始めたのは、30歳を目前にした頃だった。

「20代のうちに、可愛く着飾って、髪の毛を伸ばして生きたいという思いが強くなったんです。その頃はビジュアル系のバンドが解散して、歌い手として男性と女性を演じてきた中で、どうせなら自分のなりたい姿に近づいて花の20代を謳歌したいなと。

そこで貯金をはたいて、ヒアルロン酸とボトックスを打ったんです。世間的には、いまでも男性が美容医療(プチ整形)を受けることに、違和感を覚える方も多いかと思います。ただ私としては、素朴に『なぜやっちゃいけないんだろう』という感覚なんです。別に悪いことをしているわけではないし、好きなファッションに身を包むのは当たり前のことじゃないですか。

プチ整形も同じで、女性が当然のこととしてやっている行為を、なぜ男性が行うと後ろ指をさされるのか。むしろ男性である私が、このような身体表現を行うことで、世間的な反響が大きいのが痛快でもあるんです」

なぜ男性がプチ整形をして、それを堂々と公表してはいけないのか——。
そう主張する彼の言い分は頷ける部分もあり、いまでは整形を公開するホストやインフルエンサーだって珍しい存在ではない。Rioさんにとって豊胸は、美容医療の延長線上のような選択だったのかもしれない。

豊胸手術は総額120万円、バストサイズはDカップ

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写真右が豊胸後のもの
そしてRioさんは、33歳を迎える直前に、総額120万円を費やして豊胸手術に踏み切った。

「私がやったのは、あらかじめ形作られたシリコンバッグを、胸部の下を切開して入れる方法でした。胸部に入れたシリコンは260cc、一般的に約2~3カップのサイズアップが見込めると言われています。全身麻酔が効いていたので、手術はあっという間でしたね。私の場合は、術後は内出血や異物感が残る程度で、2日目以降はシャワーも浴びられました」

一方で、男性として豊胸したことで、焦った瞬間もあったと振り返る。

「術後3ヶ月ほどは、胸の膨らみが思ったより上にあったんです。自然な胸であれば、重力の影響を受けるじゃないですか。それが豊胸手術後は、大胸筋が張っているような感じで『大丈夫か』と思ったのですが、次第に膨らみも下がってきて安心しています(笑)。

あと現在のバストサイズは『Dカップ』と言われているのですが、思ったよりこぢんまりとしているんですよね。やはり男性だと肩幅も広いし、一概にカップサイズからは、見た目のボリュームは測れないんだろうなと分かったのも気づきでした」

腑に落ちない意見も多々ある

SNS上でも、豊胸のビフォーアフター写真を投稿したRioさん。投稿には様々な反応が寄せられたが、本人はどう受け止めているのか。

「当然『気持ち悪いな』とか『痛いな』と離れていく人もいたんですけど、想像以上に好意的なコメントを寄せてくれる方がいて嬉しかったですね。


ただ一方で、モヤモヤしたのは、『女の子になれて良かったね』『やっと本当の自分になれたね』と、感動的な物語として受け止められたことでした。私からすれば、豊胸は崇高な行為ではなくて、女性がメイクや整形をするように理想の見た目を追求する一環でしかないんです。

別にLGBTQの象徴になりたいわけでも、お涙頂戴の物語を演じたいわけでもない。単純に可愛くなって、その姿を発信して承認を得たい。ただそれだけのことなのに、理解者のようなスタンスで、同情するようなコメントには違和感がありましたね。そういったコメントを寄せる方々に悪意がないことは重々承知ですが、腑に落ちないのが正直なところです。

ある意味で、それだけ男性が豊胸するのは珍しい行為であり、結局『男はこうあるべき』という固定観念が根強いと感じるんです。私はその境界線自体が煩わしいと感じてしまうんです」

いずれは“豊胸除去”するかも

世間の反応とは裏腹に、あっけらかんと豊胸について打ち明けるRioさん。続けて、将来的に満足したら、シリコンバッグの除去も検討していると明かした。

「これから年齢を重ねて肌も弛んできたら、女装して膨らんだ胸を見せても、需要は落ちるじゃないですか。それなら女装もやめて、またその時に似合うファッションをしようと思うんです。将来的に豊胸除去をしたら、その時は『また男になった』と言われるんでしょうが(苦笑)」

男性なのに、豊胸手術に120万円——そう聞くと大層な事情があると思いがちだが、それもまた勝手な思い込みなのだろう。


<取材・文/佐藤隼秀>

【佐藤隼秀】
1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬
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