人気声優上坂すみれが、悪質な脅迫を受けたことで、9月19~20日に京都市で開催されるイベント「京都国際マンガ・アニメフェア2026(京まふ2026)」への出演を見合わせた。本人によるSNSでの発信も当面控えると発表されている。
ファンから心配の声が上がるとともに、卑劣な行為への憤りが広がっている。芸能界では近年、アンチや一部の暴走したファンが、批判や悪口の域を越えて脅迫にまで踏み込むケースが後を絶たない。なぜ「一線」を越えてしまうのか。

【関連写真】上坂すみれ、5冊目のフォトブックより【4点】

上坂は『うる星やつら』の2代目ラム役、『スター☆トゥインクルプリキュア』のキュアコスモ役などで知られ、歌手としても活動する人気声優だ。今回の「京まふ2026」ではPR大使を務め、オープニング、エンディングなどのステージに登壇する予定だった。

所属事務所「ボイスキット」は14日、上坂に危害を加える旨の予告を含む脅迫メールが複数届き、警察に被害申告を行い、捜査を依頼したと発表。翌15日には「9月27日までに複数名で誘拐し、殺害する」との内容に加え、上坂の現住所を把握し、自宅付近で誘拐することを示唆する予告もあったと明かした。

16日には警察の指導も踏まえ、「京まふ2026」への出演見合わせを決定し、本人によるSNS発信も当面控えるとしている。

これに対して、ネット上では「本人だけでなく、イベント関係者やファンにも迷惑をかけてるし悪質すぎる」「ご本人の安全やメンタルが心配」「すみれさんのSNS楽しみにしていたので本当に残念」などと心配や憤りの声が相次いだ。上坂は2017年にもネット掲示板で殺害予告を書き込まれ、当時20歳の男が威力業務妨害容疑で逮捕されている。

同様の被害は上坂に限らない。元フジテレビアナウンサーの渡邊渚は2025年、写真集『水平線』(集英社)の上に包丁を置いた写真とともに「死ね」「めった刺し」などとSNSに書き込まれる被害に遭い、30代の女が脅迫容疑で書類送検された。
渡邊はその後、殺害予告などによって外出すら怖くなり、身の危険を感じる日々が続いたと明かしている。

タレントの中川翔子は2021年、ネット掲示板に「自殺しろ」「殺害する」などと書き込まれ、20代の男が脅迫と侮辱の疑いで書類送検された。中川は「硫酸をかけてやる」といった書き込みもあったとし、数カ月にわたり命の危険を感じるほどの恐怖があったと振り返っている。

また、元AKB48村山彩希は2025年、本人や家族らに対する「虐殺するから楽しみにしとけや」といった殺害予告をネット掲示板に書き込まれ、26歳の男が脅迫容疑で逮捕された。この男は前年にも村山への殺害予告で逮捕され、有罪判決を受けて執行猶予中だった。

芸能人には、ファンもいればアンチもいる。だが個人的な好悪の感情を書き込むことと、相手の生命や身体を脅かす言葉を投げつけることはまったく別だ。それでも一部の人が一線を踏み越えてしまう背景には、いくつかの要因が考えられる。

ひとつは「距離感」の錯覚だ。SNSや配信などを通じて芸能人を身近に感じやすくなり、昔と比べて心理的な距離も縮まった。もちろん大半のファンは節度を守って楽しんでいるが、一方的に親密感が強まりすぎれば、期待通りに振る舞ってくれない相手への失望が、逆恨みへと転じる危険がある。

もうひとつが、ネット特有の「匿名性」と「顔が見えない」ことだ。
相手の表情が見えないので対面なら言えないようなことまで書き込んでしまい、匿名なら身元も分からないと思い込みやすい。心理学では、対面では控えるような言動がネット上では表れやすくなる「オンライン脱抑制」という現象が知られ、ネット上の攻撃的な言動との関連が指摘されている。

また、タレントが炎上した際などには「相手が悪いのだから叩いていい」という正義感が暴走し、言動が過激になることも考えられる。

だが、画面の向こう側には生身の人間がいる。生命や身体を脅かすような言葉を書き込めば、脅迫罪などに問われる可能性がある。

脅迫罪の法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。威力業務妨害罪なら3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性がある。民事でも2022年10月に「発信者情報開示命令」制度が施行され、発信者情報の開示請求手続きが簡素化された。匿名だから何を書いても身元は分からない、という時代ではない。

何げなく打ち込んだ数文字でも、受け取った側は大きな心の傷を負い、怯えながら日々を過ごさなくてはいけなくなる。相手の生命や安全を脅かす領域に踏み込んだ時点で、そこには「軽い気持ちでやった」「いたずらだった」では済まされない責任が生じる。

【あわせて読む】渡邊渚も誹謗中傷に法的措置 「有名税」では済まない時代…それでも止まらぬ"匿名の暴走"
編集部おすすめ