1995年にアメリカで産声を上げて以来、世界12カ国で累計600万人以上のオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んできた至高のステージ、「X Games」。日本上陸の一報が駆け巡ったとき、国内のどれほど多くのライダーが胸を高鳴らせただろうか。
スケートボード、BMX、FMXといった競技において、「X Gamesのビデオを観てシーンに飛び込んだ」と語るプレイヤーは枚挙にいとまがない。あの憧れの舞台に立つことを目指し、ストリートやパークでスキルを磨き続けてきたアスリートが日本には数多く存在した。そのリアルな夢が、千葉の湾岸に位置するスタジアムでついに具現化したのである。
©Jason Halayko / X Gamesそれから4年。シーンの舞台はZOZOマリンスタジアムから幕張メッセ、そして京セラドーム大阪へとロケーションを移しながら、毎年のように新たなバイブスと歴史を刻み込んできた。最年少での戴冠、悲願のゴールドメダル獲得、世界初披露となった超大技のメイク、そして歓喜と涙の表彰台。単なるグローバルイベントの日本誘致という枠に留まらず、X Games Japanは国内のアクションスポーツカルチャーと完全に融合し、ここでしか紡がれない唯一無二のドラマを量産する聖地となった。
2026年、新たにチーム制を採用したプロリーグ「X Games League(XGL)」が始動し、シーンからの注目度がかつてないほどに高まる今、これまでの軌跡を一気に振り返る。
2022年:日本上陸。日本のトップライダーたちが聖地で輝いた初開催
「X Gamesが日本で開催されるのは奇跡。小さい頃からの夢のコンテストで、ずっと見ていた。そのコンテストが日本に来て、そこで優勝できてすごくうれしい」
これは2022年4月24日、ZOZOマリンスタジアムの特設パークで行われた男子スケートボードストリートを制した堀米雄斗が残したセリフだ。
初陣となった「X Games Chiba 2022 Presented by Yogibo」では、スケートボード・BMX・Moto Xの3競技10種目がラインナップ。3日間で延べ4万人の観客が詰めかける大盛況のなか、ローカルである日本人勢が凄まじいチャージを見せた。
男子スケートボードストリートと女子スケートボードパークにいたっては日本人が表彰台を完全ロック。東京オリンピックのゴールドメダリストである堀米雄斗と四十住さくらが、憧れの舞台でも圧倒的な実力を示して頂点へと君臨した。
さらに特筆すべきは、19年ぶりにX Gamesの公式種目へと返り咲いたBMXフラットランドである。リザーブ枠から急遽出場が決まった早川起生は、欠場を余儀なくされたライダーへの「彼の分まで全力を尽くす」という熱い約束を胸にライディング。見事に金メダルを勝ち取った。このリザルトの背景にあったストーリーは、単なる勝敗の記録を超えて、BMXシーンが内包するカルチャーの深さと、ライダー間の強固な絆を証明していた。
2023年:悪天候を覆す快挙。13歳の新星誕生と劇的な逆転劇
翌年も引き続きZOZOマリンスタジアムをベースに開催された「X Games Chiba 2023」。2日目が悪天候によってキャンセルされるタフなレギュレーションとなったが、それでも今大会で叩き出された数々の快挙は、現在も色褪せることのない伝説として語り継がれている。
最もシーンに衝撃を与えたのは、当時わずか13歳の小野寺吟雲が男子スケートボードストリートで刻んだ、「X Games史上最年少優勝」という前人未到の大記録だ。タイトなセクションをまるでゲームのコントローラーを操るかのように軽々と攻略していく異次元のスタイルは、グローバルのスケートコミュニティを震撼させた。
女子スケートボードパークでは開心那が念願のX Games初タイトルを奪取し、日本のパークシーンが世界最高峰のレベルにあることを改めて誇示。また、BMXパークのベストトリックセッションでは、ライアン・ウィリアムズが「900・フレア」を公式戦で世界初メイク。スタジアムのボルテージを最高潮へと叩き上げた。
スケートボードバートのベストトリックでは、日本の芝田モトが「キックフリップ・マックツイスト」を完璧に合わせ暫定トップに躍り出たものの、ラストにエリオット・スローンが「キャブ・ヒールフリップ・インディ・720」をドロップして逆転優勝。土壇場でのドラマチックな逆転劇は、一発勝負のベストトリックならではの醍醐味となった。
そしてBMXフラットランドでは片桐悠が金メダルを奪う。前年のリザーブという悔しさをバネに臨んだ片桐が、最高のリベンジを果たした形だ。師弟関係にあり、日本のフラットシーンを牽引してきた内野洋平と全力をぶつけ合った決勝ののち、クルー全員で歓喜する姿は、このカルチャーが持つ温かいコミュニティそのものを体現していた。
2024年:舞台は幕張メッセ。互いのリスペクトが支えた至高のハイレベルバトル
3度目のリニューアルとなった「X Games Chiba 2024」は、スタジアムからインドアの幕張メッセへとベースを移した。
この年も「世界初」の称号が飛び交う熱いセッションが連続した。男子スケートボードストリートでは白井空良が悲願の自身初となる金メダルをロック。ベストトリックでは池慧野巨が「ノーリーバックサイドビッグスピンヒールフリップバックサイドテールスライド」という超絶スキルをクリーンにメイクし、表彰台の頂点へ。
バートのベストトリックでは、X Gamesの歴史に刻まれる名勝負が勃発する。芝田モトが「フロントフットインポッシブルリーンエアー540」という世界初メイクの超高難度トリックを繰り出し暫定首位に立った。しかしその直後、ギー・クーリーが「キックフリップボディバリアル900」という、これまた未踏の新技をねじ込み逆転。同じジャムセッション内で二人のライダーが世界初の新技をぶつけ合うという、前代未聞のデッドヒートとなった。メイクが決まった瞬間、誰よりも早くクーリーのもとへと駆け寄り、リスペクトを贈ったのは惜しくも逆転された芝田本人であった。リスペクトの精神で繋がるストリートカルチャーの美しさが、そこには確かに存在していた。
BMXシーンにおいては、中村輪夢がパーク種目で5年ぶりとなる銀メダルを獲得し、悲願の頂点へ向けていよいよカウントダウンを開始。BMXストリートではギャレット・レイノルズがX Games通算16個目のゴールドメダルを手中に収め、自身が保持する史上最多記録をさらに更新してみせた。
2025年:大阪開催が実現。地元での悲願達成と歴史的快挙に沸いたドーム
そして記憶に新しい「X Games Osaka 2025」。世界中の視線が集まる中、コンテストの舞台を京セラドーム大阪へと移し、X Games史上初となる関西エリアへのディグが実現した。完全クローズドのドーム空間という圧倒的なスケールは、Moto Xのエンジンエコーを強烈にリフレクションさせ、観客の熱量を過去最高にまで引き上げた。
この大会は、日本のBMXシーンにとって歴史的なコンテストとなる。
BMXパークでは、日本の絶対的エースである中村輪夢が悲願のX Games初金メダルを奪取。2019年の銀メダル獲得以降、幾度となく表彰台を逃す苦しい状況を乗り越え、ついに地元・関西の地で世界の頂点に立った。競い合った仲間たちが涙を浮かべながら中村のもとへ集まったシーンは、一人のライダーが積み重ねてきたプロセスの重みを物語っていた。なお、これはフラットランドを除くBMXカテゴリーにおいて、日本人初の金メダル獲得という重要な節目でもある。
一方、BMXフラットランドでは内野洋平、佐々木元、片桐悠というドメスティックなトップライダーが表彰台を独占。なかでも、通算11回の世界タイトルを保持しながらもX Gamesのゴールドだけは未獲得だった42歳のレジェンド・内野洋平が掴み取った金メダルは、X Games史における最年長ゴールドメダル記録の歴代2位となる快挙であった。
スケートボードでもドラマの連鎖は止まらない。
数字以上の価値を残す、X Games Japanが日本の次世代に蒔いた種
4回の開催を重ねることで、X Games Japanが国内のアクションスポーツシーンに落としたインパクトは計り知れない。リザルトの数字だけでなく、ワークショップや体験会に足を運んだキッズたちの目に見えた熱量、会場を埋め尽くしたファンの歓声、そして毎年アップデートされ続けるトリックのクオリティが、このカルチャーの裾野を確実にビルドアップしてきた。
日本人ライダーがグローバルなトップ戦線で当たり前に勝鬨をあげるようになった今だからこそ、そのバックボーンにある日々のハードワークや、ストリートへのプロップスを忘れてはならない。堀米がかつて語ったように、「スケートボードが少しずつストリートで認められている」という確かな手応えを与えてくれたこと。それこそが、このX Games Japanが歩んできた確かな足跡だ。
2026年、革新的な新リーグの幕開けとともに、我々はふたたび新たな歴史の証人となる。それだけは間違いのない事実だ。
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