レビュー

PEファンドによる企業買収のニュースを目にする機会が増えている。東京証券取引所による資本効率向上の要請、非中核事業の切り離し、事業承継問題。

こうした日本企業を取り巻く構造変化が、PEファンドへの期待をますます高めている。一方で、「PEファンドは企業を買収し、コスト削減をして高く売る存在」というイメージを持つ方もいるのではないだろうか。そうした固定観念を覆す一冊が本書だ。
ベインキャピタルは日本最大級の投資実績を持つPEファンドであり、本書ではすかいらーくHD、キオクシアHD、ニチイHDなど9つの実例を紹介している。本書に克明に描かれるのは、事業の競争力を見極め、経営陣とともに組織や事業の土台を整え、成長の可能性を引き出していくプロセスである。
印象的なのがキオクシアHDの事例だ。半導体事業は巨額投資が必要で、市況変動も激しい事業である。ベインキャピタルは、経営基盤の整備と成長投資を進めながら、同社を再上場へ導いた。ベインキャピタルならではの視座を通じて、企業価値向上の本質を学べるのは大きな魅力だ。
もっとも、本書が伝えたいのは特別な経営手法ではない。企業価値向上に必要なのは、人材への投資や組織づくり、適切な資本配分など、地道な取り組みの愚直な積み重ねだという。ベインキャピタルの強みは、そうした改革に経営陣と一体となって責任を負い、自らも投資家として成果を出すべき立場で伴走する点にある。
本書は、経営者や事業開発、経営企画に携わる人を鼓舞し、多くの示唆を与えてくれるだろう。

本書の要点

・ベインキャピタルは、投資先の企業価値向上に愚直に真剣に向き合っているPEファンドであり、創業時から存在する「ポートフォリオグループ」がその企業価値向上を支えている。
・すかいらーくHDでは、現場で伴走しながらコスト構造と店舗価値を磨き直した。
・キオクシアHDでは、カーブアウト後の経営改革、人材戦略、成長投資を支え、世界で戦う独立企業への転換を後押しした。



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