レビュー

三重県は中部地方なのか近畿地方なのか。関西人は納豆が嫌いとよく言われるが、西日本のなかでは意外と少数派と聞いた。

四国にはいわゆる「関西弁」らしい方言の地域と、関西とは感じられない地域とが混在している気がする。そうした“地理あるある”は話のネタにほどよいが、ザックリとした印象でしかなく、偏見につながってしまうこともある。
都道府県、市区町村という単位で便宜的に地域は分かれている。しかし、買い物などの経済圏、気候、食文化といったさまざまな点で、地域性はまたがって存在している。北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州という、より大きな地方区分においても、選挙区、産業、電力会社の管轄などで境界線は一定しない。東日本/西日本という区分もあるが、魚を食べる文化の側面で考えれば、日本海側/太平洋側で分けたほうが適切だ。
本書はこのように、一般的に取り沙汰される日本の「地理」の分け方に疑義を挟む。地域区分とは地域を「分ける」だけでなく、「つなぐ」営みでもあるというのだ。ある共通性が、離れた場所を新しく結びつける。しかもそうした結びつきは、いくらでも描き出すことが可能である。
すでに描かれている境界線にとらわれず、体験できる世界を拾ってゆく。移動した分、見えてくる道がある。
「地図」を捨て、街に出よう。そこから、「新しい地理」を見つける楽しさに出会えるはずだ。

本書の要点

・単一の中心と、同等の規模を持ち、相互に排他的な地方ブロックという考え方は、あくまで行政上の理想であり、「地方ブロック幻想」とでも呼べるものである。
・鹿児島県から静岡県あたりまでの太平洋側一帯を、「南海日本」と呼ぶとすると、さまざまな共通点がみえてくる。
・地域区分とは、等質地域という類似性、もしくは結びつきの強さをみる結節性を判断する行為といえる。



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