※本稿は、澤田誠『科学的根拠で証明する上手な脳の使い方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■夜に眠る準備となる起床後の習慣
どうしたら睡眠の質を高められるのでしょうか。
多くの人は忙しい時期ほど睡眠を削りがちですが、実は睡眠こそが仕事のパフォーマンスを下支えする最重要な土台です。
睡眠の質を高める方法は「気合」や「根性」ではありません。脳のスイッチを正しく切り替える環境づくりが核心です。
まず意識してほしいのは、起きる時間を固定することです。
夜更かしを避けることよりも、毎朝ほぼ同じ時刻に起きるほうが体内時計は安定します。
体内時計が整うと、夜になると自然に眠気が訪れ、深い睡眠に入りやすくなります。平日と休日で起床時刻を大きくずらさないことが、質の高い睡眠への第一歩です。
次に重要なのが、朝の光を浴びることです。
起床後に太陽光を浴びると、脳は「一日が始まった」と認識し、夜に眠る準備を始めます。
曇りや雨でも問題ありません。数分でも屋外に出るだけで、夜の寝つきが改善されます。
■就寝前、最後にカフェインを摂っていい時間
就寝前の過ごし方も大切です。
寝る直前までスマートフォンやパソコンを見ると、脳は仕事モードのままになります。
可能であれば、寝る1時間前から画面を見る時間を減らし、照明を少し暗くするだけでも効果があります。ベッドや布団は「眠る専用」と考えると良いと思います。
また、就寝120~90分前に40度ぐらいのぬるめのお風呂に入ると、体温が下がるタイミングで眠気が強まり、自然な入眠につながります。
カフェインやアルコールの摂取にも気をつけましょう。カフェインの摂取を就寝前8時間以降は控えること、アルコールは寝酒にしないようにしましょう。
日中のストレスや就寝前のスマホ、ある種の薬剤、アルコールなどがレム睡眠を減らす作用があると言われています。心当たりがあれば改善してみてください。
そして、布団に入ってからは、呼吸をゆっくり整えることを意識してください。
寝るときの姿勢は脳の老廃物が処理されやすい横向き(横臥位)の姿勢をとり、枕は首が曲がらない高さに調整します。
■「早く眠ろう」と考えるほど脳は覚醒する
それでも眠れない場合は、眠る努力はしないこと。「早く眠ろう」と考えるほど脳は覚醒するため、逆効果になるからです。
眠れない夜の対策として最も重要なのは、脳の「過覚醒」状態を鎮め、自律神経をリラックスモードへと切り替えることです。
本記事の最後に、私が実践して特に有効だと思う方法を2つ紹介しましょう。
1つは、力が入ってしまう筋肉を意識的に緩める方法です。「筋弛緩法(漸進的筋弛緩法)」と呼ばれていて、いったん筋肉に力を入れたあと脱力するというものです(図表1)。
緊張したり何かを考えたりしているとき、私たちは無意識に力が入ります。これは、何かが起きたときにすぐに動けるように筋肉が緊張して備えているからです。
そこで、意図的に筋肉を緊張させてから力を抜くと脱力しやすくなります。
まず、背筋を伸ばしすぎたり、反対にだらけすぎたりしない姿勢で、ベッドや椅子に浅く腰掛けます。
このとき、力が抜けている感覚を意識しましょう。これを3~5回繰り返すと緊張が解けて眠りやすい状態を作ることができます。
この方法はリラクゼーションにも有効なので、起きているときでも脳の緊張をほぐすことに役立つはずです。
■副交感神経を活性化させる呼吸法
2つ目は呼吸法です。瞑想法やヨガに取り入れられている「4‐7‐8呼吸法(※ハーバード大学医学部A・ワイル博士が古代インドの呼吸法「プラーナーヤーマ(Pranayama)」を科学的にアレンジしたもの)」は、交感神経の活動を弱めて副交感神経の活動を高める働きがあります。
やり方は、①鼻から息を4秒間吸い込む、②7秒間息を止めてリラックス、③8秒かけて口から息を吐き出す、④これを3~4回繰り返します。呼吸は腹式呼吸で行いましょう。
無理やり呼吸すると過呼吸・めまいのリスクがあるため、苦しく感じたら中断してください。
■判断ミスを減らし、感情の揺れを抑える
ほかにも、心理学的に有効だと言われている方法に「コグニティブ・シャッフル睡眠法」というものがあります。
これは、特定の脈絡がない単語を順に連想し、そのイメージを頭の中で映像化していく方法で、具体的には、「あ」から始まる「アイスクリーム」、「い」から始まる「いちご」……と、単純な画像を思い浮かべていきます。
論理的な思考を停止させ、脳に「今はもう活動しなくていいんだ」と思わせる効果があると言われています。
脳の論理的思考を司る部分を休ませ、夢を見ているときのような非論理的な状態をあえて作り出すことで、自然な入眠を誘発すると言われているのですが……、残念ながら私には向いてなかったようです。昔ながらの「羊が1匹、羊が2匹……」とあまり変わらないような気がしてしまいました。
もし興味のある方は試してみてください。
質の良い睡眠は、記憶を定着させ、判断ミスを減らし、感情の揺れを抑えてくれます。
現代人はストレス過多です。常に心身の負荷の大きい生活を強いられています。
だからこそ、睡眠を仕事や生活の一部として守ることが大切です。
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澤田 誠(さわだ・まこと)
脳研究者
1958年香川県生まれ。脳研究者、名古屋大学名誉教授、藤田医科大学客員教授。東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程生命化学専攻修了。理学博士。
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(脳研究者 澤田 誠)

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