レビュー

「地域を元気にしたい」という願いは尊いが、それだけでは地域は救えない。本書は、人口減少と地域問題というテーマに対し、冷静な現実認識と、前向きな処方箋を提示する一冊である。


まず読んでいて背筋を伸ばされるのが、コロナ禍が日本の人口減少を約20年前倒ししたという事実だ。この厳しい現実を起点に、著者はエコノミストらしい鋭さで、「地方創生で人口1億人」「東京一極集中の是正」といった、これまで自明とされてきた政策目標に切り込んでいく。通説を鵜呑みにせず、データとロジックで問い直していくその姿勢は、地域政策に関心のある方々にとって、思考の軸になってくれるはずだ。
そのうえで示される答えが、「スマート・シュリンク」という発想の転換である。目指すのは人口規模の維持や増加ではなく、縮みながらも住民一人ひとりのウェルビーイングを守っていくことだ。しかも、特定地域だけの「劇場型」成功譚ではなく、ナッジやフューチャー・デザインなど、どの地域にも開かれた「共有型」の手法を提示している点が心強い。岡山県美咲町の事例は、地域の意思決定に新しい視点を持ち込むものであり、読み進めるほど自分の頭の中の地図が塗り替えられていく感覚がある。
「賢く縮む」ことは、決して諦めることではない。はたして、縮小の先にどんな地域の姿を描けるのか。読み終えたとき、その問いはもう自分ごとになっているだろう。日本の未来を本気で考えたい方にぜひ手に取ってほしい一冊だ。

本書の要点

・日本は「人口オーナス」局面にあり、コロナ禍でその変化はさらに加速している。


・本書は「人口1億人目標」「消滅自治体論」「東京一極集中の是正」など、地方創生をめぐる通説をデータとロジックで問い直している。
・縮小を前提に住民のウェルビーイングを高める「スマート・シュリンク」を提唱し、ナッジなど誰でも使える「共有型」の具体策を示している。



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