レビュー

50歳を過ぎてから、未経験のスポーツの場にひとり立つ。それまでの蓄積が何も活かせない。

若い頃と比べて、疲労の抜け方も反応速度も、何もかも違っているのに、努力すれば年齢を飛び越えられると、なぜか思ってしまう。こうしたことが起こるのは、身体を動かす場面だけではない。「仕事でも人生でも、同じだった」のだ。
若い頃の成功体験が、そのまま通じるとは限らないのに、ついついそれに固執してしまう。逆の見方をすれば、その時点から積み上げた経験、知恵は少なくないはずだ。だからこそ、60歳を目の前にしたとき、「今の自分に合う戦い方に変えていくこと」を考えはじめたのである。同じやり方を続けていく、ただ前だけを向いていく自分への違和感を、著者は「60歳の霧」と呼んでいる。ただし、そうした霧は早ければ30代で立ち現れる人もいるだろう。その意味で、本書のメッセージは、これから人生の節目を迎えるあらゆる人に、どのタイミングで効いてくるかわからないものといえる。
「これからどこへ向かうのか。何を手放すのか。何を次の力に変えるのか。
限りある時間を、どう使うのか」。これらのテーマを考え抜き、「人生の後半をアップデートする」備えは、いつしておいても早すぎるということはない。著者の豊富な経験をひとつずつ読み進めるだけでも、やがてくる未来への有意義な準備を整えようと思えるはずだ。そう、もうあなたはすでに、後半戦へのスタートラインに立っている。

本書の要点

・「経験を意味に変える」ことで「次の行動に活かす」。判断の質と本質的な洞察という価値につながる結晶性知能を力にしていくことが、人生後半戦には必要となる。
・老いていくことのおそろしさは、何もかも面白がれなくなることにある。変えたいと感じていても、動けなくなってしまう。
・足し算も引き算も、「毎日の小さな選択の積み重ね」である。



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