【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】


 特別編 ビートルズと日本のGS①


  ◇  ◇  ◇


 ビートルズの影響を受けて、1960年代後半、より具体的にいえば68年に爆発的に盛り上がったのが、「グループサウンズ」(GS)のブームである。


 分かりやすくいうと、80年代後半に一瞬盛り上がった、あの「バンドブーム」の大規模版だ。


 人気を誇った「4大GS」は、ザ・スパイダース、ブルー・コメッツ、ザ・タイガース、ザ・テンプターズとなるが、この中でビートルズを最初に「発見」したのはスパイダース、それも、バンドの理論的支柱だった、かまやつひろしである。


 63年の暮れか、64年の年明けあたり。日比谷の三信ビル(当時渡辺プロダクションが入っていた)の中の店に、なぜか『ミート・ザ・ビートルズ』(アメリカ盤)のレコードが置かれている。かまやつひろしが偶然、その店に入り、ジャケット(『ウィズ・ザ・ビートルズ』とほぼ同じ)をまじまじと見つめる。彼の著書『ムッシュ!』(日経BP)から。


──長い髪で額を覆い、右半分が影になった四人の若者の顔が、黒いバックに浮かぶように並んでいる、そのモノトーンのジャケット写真を見て、ぼくはハッとした。彼らのビジュアル、伝わってくる雰囲気、すべてひっくるめて、あのグリニッジ・ヴィレッジの空気と同じだった。まだ日本では無名だったビートルズだが、ぼくはジャケットを見ただけで、彼らを一瞬にして理解した。


 グリニッジ・ヴィレッジ……この段階で、すでにニューヨークを訪ねているというのだから、さすがムッシュである。そして。


──迷わずレコードを買い、何度も聴いた。すごく新鮮で、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」がとくにぼくのお気に入りだった。

(中略)そのとき、ぼくには近未来が見えたと思った。次に来るもののフックを捕まえたという確信があった。震えるくらいの感動だった。


「次に来るもののフックを捕まえた」という表現がいい。かまやつひろしは決意する。音楽的方向性のはっきりしないスパイダースをビートルズ風のバンドにするぞ、と。


 そして彼は、バンマスの田辺昭知(現:田辺エージェンシー会長)にこう言うのである。


──「ビートルズっていうバンドがあるんだ。こういうのやろうぜ」


 かくして、アコースティックギターばかり弾いていた、かまやつひろしが、初めてエレキギターを手にする。この瞬間、グループサウンズブームの火蓋が切られたのだ。 (この項つづく)


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。

主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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