【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】
特別編 ビートルズと日本のGS②
◇ ◇ ◇
グループサウンズ(GS)ブームは、ビートルズからの影響を受けながら、爆発した。
しかし、ビートルズの音楽はリアルタイムでぐんぐん高度化していく。
まずは「演奏しながら歌う」というスタイルの普及だ。特にギターを弾きながら歌うメンバーが多かった。しかしポールのように流麗なベースを弾きながら歌うことは、やはり難しかったようだ。ポール的なベース&ボーカルについてはキャロルの矢沢永吉の登場を待たなければならない。
また「メンバーがソングライティングする」ということも、ビートルズの影響として大きかった。代表的なソングライターといえば、ザ・スパイダースのかまやつひろしに加えて、ブルー・コメッツの井上忠夫(大輔)、ワイルド・ワンズの加瀬邦彦など。
ただ、多くのGSは、メンバー自作ではなく、職業作家による歌謡曲的な作品をあてがわれ、ビートルズ性~ロック性を失っていく。
あと、さまつなところでいえば「ミリタリールックの流行」がある。多くのGSがこぞって、軍隊風ユニホームを着ていた。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットからの影響が大きかったという。
というわけで、ファッションはともかく、ビートルズに影響された割には、GSの本質は決してビートルズ的ではなかったとも言える。逆にいえば、GSにとってビートルズが、それぐらいすごすぎたのだ。
それでも「日本のビートルズ」が生まれなかったわけではない。むしろGSへの対抗軸として、60年代後半以降の「日本の新しい音楽」(拙著タイトルから)の中に、ビートルズ性が受け継がれ、育まれていくことになる。
端緒は、存在自体がビートルズ的だったザ・フォーク・クルセダーズ。
そして「日本の初期ビートルズ」としてのキャロル、「日本の中後期ビートルズ」としてのチューリップ。
さらに、熱烈なビートルズファンでありながら、彼らの音楽性を日本的に湿らせたような井上陽水や、『ビートルズが教えてくれた』(73年)を歌った吉田拓郎らが、まさに「日本のビートルズ」になっていく。
そして彼らの末裔が現在のJポップである。ということは、やはりビートルズは、まごうことなき「Jポップの父」だったのだ。
▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。

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