「皆さん、おめでとう!」「世界の船はエンジンを始動し、石油を供給せよ!」──全面開放を強調するトランプ米大統領の軽い言葉とは裏腹に、深刻なナフサ不足の重みは増すばかり。米国とイランの双方はすでに戦闘終結に向けた覚書に署名。
覚書にはホルムズ海峡の開放と米軍の対イラン海上封鎖の解除が含まれるが、いずれも両国の協議期限と同じ「60日間」と限定的だ。封鎖が解けても、すぐには元通りの航海は望めない。海域にイランが敷設した機雷があるからだ。
今回の戦闘勃発まで、日本は原油輸入の9割超を中東産に頼り、その大半はホルムズ海峡を経由していた。約1万2000キロも離れた中東諸国への航行日数は、荷役に要する約5日間を含めて往復45日前後。一方、米政府高官は、機雷除去など通航の正常化には2週間以上かかると説明している。60日の猶予を与えられても、日本のタンカーがホルムズ海峡に向かうのは、ほぼ不可能だ。ペルシャ湾内に残る38隻の日本関連船舶が脱出できれば、及第点であろう。
早くも米イラン双方の主張に隔たりがみられ、協議は難航必至。ましてや横紙破りなトランプ大統領のこと。協議中のイラン再攻撃リスクは拭えず、出方次第でイランが「再封鎖」に乗り出す恐れもある。
トランプ大統領強弁の「全面開放」には程遠く、日本のタンカーはとてもじゃないが、「ホルムズ海峡通過できません!」だ。
■「自由な安定航行」は戻るのか
政府は原油の代替調達を進めた結果、7月は必要量の100%を調達できる見通しと発表したが、実は心もとない。
「米国産原油の調達量を前年比10倍以上のペースで増やし、代替調達の大半は米国産が占めています。ただ、米国は取り立てて原油を増産しておらず、抱えた在庫を日本に高く売りつけているようなもの。しかも米国内では、ガソリン価格の高騰や原油の在庫減少を受け、輸出規制の議論が浮上。政府への圧力が増しています。代替調達は綱渡りの状況です」(コネクトエネルギー合同会社CEO・境野春彦氏)
原油の安定調達なしには、ナフサ不足も解消されない。結局、ホルムズ海峡の開放は、形だけに終わる。
トランプ大統領が始めたバカな戦争のせいで、二度と元の世界には戻れないのか。
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