【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#74


 アルバム『リボルバー』(1966年8月5日発売)④


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■『ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア』


 日本語の正式表記は「エヴリホエア」。英語発音を意識して「ヴ」にしているにもかかわらず「ホエア」が何ともまぬけ。


 同じくポールによる『フォー・ノー・ワン』と並んで、ギャンギャンと賑やかしいアルバムの中でオアシスのような一曲である。


 メロディーがひたすら美しい。私が大好きなのは、試聴リンク再生時間「0:55」のところで、一瞬転調するところ(G→B♭)。小理屈はさておき、サッと視界が広がるような気持ちよさが感じられるだろう。


 しかし、それ以上に美しいのが、ポール、ジョン、ジョージによるメロディーのバックで「♪ウー」とずーっとハモっているコーラス。


 アメリカのビーチ・ボーイズの影響があるとされている。『ペット・サウンズ』という、彼らがコーラスの限界を極めたような名盤(にして奇盤)がリリースされてすぐの時期だ。イギリス勢としても「やってやんよ」と大いに発奮したに違いない。【オリジナル記事で試聴する


 これぞビートルズという感じの劇的に美しいコーラスだ。そして何といっても、『ペット・サウンズ』よりもまったくポップで聴きやすい。


 最後、細かい話。再生時間「1:54」からの「♪ネヴァー・ダイズ」と、「1:56」から「♪ウォッチング・ハー・アイズ」と下降するコーラスにゾクゾクする。

ここ、分かる人だけ分かればいい。


■『イエロー・サブマリン』


『ラバー・ソウル』における『ミッシェル』同様、アルバムの中で、もっとも有名ながら、ビートルズファンから、もっとも、というか、あまり好かれない一曲。


 この創造性の極致のような『リボルバー』まで来て、こういう子供向けの曲が必要なのかという疑問が湧いてくる。


 ただ、ブラスバンド含め、さまざまな効果音を入れたコミカルかつ演劇的なアレンジをしたいという創造性を確かめることだけはできる。


 あと、もう1つ、日本の音楽ファンへの貢献があったとすれば、大瀧詠一プロデュース、金沢明子『イエロー・サブマリン音頭』(82年)の原曲になったことだ。


 ビートルズ小ネタ満載の曲だが、その中の1つだけ紹介しておくと、エンディングに参加した杉真理が叫んでいる「ハザマケンジ!」というフレーズは、前回紹介した『エリナー・リグビー』の歌詞に出てくる「ファーザー・マッケンジー」のシャレなのである。 


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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