【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#75


 アルバム『リボルバー』(1966年8月5日発売)⑤


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■『トゥモロー・ネバー・ノウズ』


 アルバム『リボルバー』のラストを飾る曲は、1966年の春、アルバムの中で、いちばん最初にレコーディングされている。つまりは4人にとって『リボルバー』というプロジェクトを象徴し、代表する曲だったと思われる。


 録音したテープをループさせたり、逆回転したり、インドの楽器(タンブーラ)を導入したり。さらには声を電気的に加工する「ADT」なる新装置も導入されることとなる。


 いわく「アーティフィシャル・ダブル・トラッキング」。ボーカルを2回重ねる、例のいわゆる「ダブルトラック」の処理を自動的にやってくれるもの。1回歌うだけで、2回歌ったような声になるのだ。


 そんな新機軸だらけのサウンドをバックに、ジョンが、極めて哲学的な歌詞を、お経のように歌い続ける。「意識を離れ、安らかに下る流れに身を委ねてみろ それは死ではない」。【オリジナル記事で試聴する


「あれれ?」──ついこないだまで「ロックンロール!」「アイ・ラヴ・ユー!」「金をくれ!」などと叫んでいたジョン君、どうしちゃったのよ、という感じだ。


 また、中期のビートルズは、きらびやかなコード進行が自慢だったくせに、ここではコードが、ほとんど進行しない。このことも、この曲のお経感というかお念仏感を高めている。


 さぁ、どうする、どうなるビートルズ! いや、大変なことになっていくのです。次のアルバムのラストの曲に向かって……。


■『アンド・ユア・バード・キャン・シング』


「そして君の鳥は歌える」。は? これまた歌詞がよく分からないジョンの曲である。ただし、『トゥモロー・ネバー・ノウズ』ほど、やりたい放題ではなく、何とかポップソングとして成立している。


 音楽的キモは、ポールとジョージによる練りに練られたツイン・リードギターである。


 よく考えれば、こんなギターサウンド、ライブでは絶対に再現できない。逆にいえば、この見事なツインリードに、ライブから解放されて録音芸術に踏み出したビートルズの本懐を確かめるのだ。


 細かいが、試聴リンク再生時間「1:20」の「♪ユー・テル・ミー・ザット~」のところで、それまでと違って、コーラス(ポール?)が、上の音程にすっと入るところがいい。


 この後のビートルズの音楽は、正直わけの分からない方向に向かっていくものの、こういうさりげないアイデアが、小指1本、ポップの世界に立ち止まらせるのである。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。

日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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