決して芝居がまずいということではない。せりふのテンポはいいし、演技にスピード感もある。

ただ、この役は小池栄子に向いていない印象なのだ。


 NHK土曜ドラマ「ムショラン三ツ星」は、一流レストランの元シェフが刑務所の管理栄養士として働くことになり、受刑者や刑務官を相手に四苦八苦する社会派コメディーで、評判もいい。その栄養士役を小池が演じている。刑務所の食費は1人1日わずか543円。皮がたばこ代わりにされるバナナやアルコール分のあるみりんは、食材・調味料に使えないなど制約も多い。そんな中でも小池の“栄養士の先生”は、少しでもおいしいものを食べさせようとあれこれ工夫するのだが……。


■原作はほんわかで、もっと笑える


 調理するのは受刑者で、まともな食事を作った経験なんてほとんどないから、ふかした芋を冷やすのに水をぶっかけたり、冷凍コロッケが次々と爆発したりとテンヤワンヤである。


 実はこうしたエピソードはすべて実話。というのも、実際に愛知・岡崎医療刑務所に勤務している管理栄養士・黒柳桂子さんの著書を原作にしているからだ。読むと、黒柳さんはざっくばらんな、ほんわかした人柄で、刑務所内の行き違いも笑えるエピソードが多い。そこが小池とどうしても重ならないのである。


「NHK大河『鎌倉殿の13人』の北条政子、2024年夏ドラマ『新宿野戦病院』の米軍の元軍医など、気が強く自分の生き方を貫こうとする役の小池は痛快でした。

でも、『ムショラン』の主人公は一歩引いたナイーブな役どころなので、小池が目をむいて甲高い声で頑迷な上司に食ってかかったり、ふてくされる受刑者にムキになって説教したりというのは、ちょっと違うなあという感じでしょうか。どちらかといえば、のんびりしたドラマですものね。小池の魅力の強い目ぢからが、このドラマではかえって邪魔になってます」(テレビ情報誌編集デスク)


 小池は夏ドラマで「さよならノワール」(フジテレビ系)に主演する。事件・事故の被害者や遺族をケアする東京・西池袋署「犯罪被害者支援室」の警察官役だ。


「苦悩する被害者や遺族と向き合い、力になりたいともがく、これまた難しい役です。小池にとって役者の幅を広げられるかどうか、いま正念場ですね」(ドラマ制作会社プロデューサー)


「ムショラン」の見どころは、作ってみようかと思わせるムショ飯だ。6月20日放送はクリスマスメニューの「から揚げ」、27日の最終話は「年越しカップ麺」かな。


(コラムニスト・海原かみな)


編集部おすすめ